沖銀・山城頭取に聞く なぜSDGsが「経営の大本」なのか 貧困解決への思いは 〈焦点インタビュー〉


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄銀行頭取 山城正保氏

 沖縄銀行は昨年3月末に、県内金融機関ではいち早くSDGs(持続可能な開発目標)に取り組むと宣言した。企業が環境や社会への責任を果たしているかどうかを重視するESG投資(E=環境、S=社会、G=ガバナンス)の広がりなど、金融を通して企業の持続可能な社会づくりを後押しする動きが世界的に始まっている。沖銀の山城正保頭取に、1年間の取り組みや今後の抱負を聞いた。

 ―SDGs宣言から1年が経過する。

 「2019年3月にグループ全体でSDGsに取り組むと宣言し、銀行本部と新入行員を中心に企画を続けた。具体的な取り組みでは、海洋環境問題解決に向けて世界銀行のサスティナブル・ディベロップメント・ボンド(世銀債)をおきぎん証券で取り扱っている。投資された資金は世界銀行が開発途上国で展開しているさまざまなプロジェクトを支える資金になる」

 「8月に新入行員が企画したクリーンビーチ活動を開催した。県内9カ所で、グループ約千人の役職員や家族が参加して清掃した。今年1月には女性活躍推進が認められ、労働局からえるぼしに認定された。ペーパーレス化で余剰になったチューブファイルを小中学校に寄贈するなど、幅広い分野で充実した施策を展開できたと思う」

 ―改めて宣言の背景は。

 「地域密着、地域貢献という当行の経営理念に適合していたので採用した。SDGsを最終的なゴールとして、私たちの経営理念に沿った形でしっかり推進していくことが重要だ。20年度から、経営戦略の大本にSDGsを置いていく。総合力の発揮や共通価値の創造など四つの戦略が、SDGsにひも付くイメージだ。企業価値も含め、SDGsを推進することは一番基本的で大事なことだ」

 ―貧困問題の解決に力を入れている。

 「『貧困をなくそう』という目標に対する取り組みは特に強化している。外貨定期預金の手数料の一部や、通帳不発行の取り組みに応じた寄付などをしてきた。県民広場でチャリティーバザーを実施し、沖縄こども未来県民会議へ売り上げを寄付した。経済的に恵まれない子どもたちに夢を与えようといろいろなイベントをしている。貧困家庭ではなかなか機会を得られないキャリア教育や海外ホームステイの機会提供などを支援している」

 ―今後の課題は。

 「まだ発信力に課題がある。グループ内で終わるのではなく、県民全体を巻き込んだ大きなうねりにしていきたい。世界的な目標の達成に向けて、個々の企業でできることにはおのずと制約がある。ステークホルダーが問題意識を共有し、連携しながら取り組むことで幅広いインパクトを生み出すことにつながる」

 (聞き手 沖田有吾)