再生可能なエネルギー、どうする?【SDGsって? 知ろう話そう世界の未来】7


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 町で太陽光パネルを目にすることが多くなった。太陽光や風力など自然エネルギーを使った発電はずいぶん身近になったが、県内で発電される電力のうち再生可能エネルギーはまだ6%ほど(2018年、沖縄電力)。ほとんどは石炭を燃料とした火力発電に頼っている。SDGs(持続可能な開発目標)の目標7は「エネルギーをみんなに、クリーンに」。省エネでエネルギー消費量を減らし、化石燃料に依存しない発電の実践や研究開発の現場からは、技術を支える人材育成の重要性も浮かび上がる。

廃食油を再利用し売電

大幸産業 沖縄市

 温室効果ガスの排出量増大につながる化石燃料依存からの脱却が求められている。全ての国の人々がクリーンで手ごろな電力を利用するためには再生可能エネルギーの生産拡大が欠かせない。

 沖縄市の大幸産業(大城實社長)は飲食店などから出た使用済みの食用油(廃食油)のリサイクル業を展開しており、独自技術で廃食油の不純物を取り除き、リサイクル燃料としてバイオマス発電に再利用している。廃食油は飲食店のほか、ホテルや学校などから回収する。水やゴミなどの不純物が含まれており、化学薬品を使わないクリーンな方法で精製している。

廃食油を活用した発電機を紹介する大幸産業「沖縄バイオマス発電所」の大城章実所長=11日、沖縄市登川

 2016年2月、同社は経済産業省から再生可能エネルギーの固定買い取り制度(FIT制度)の認定を受けた。発電した電力は自社で使用し、余剰分は新電力の企業に売電している。同社が運営する沖縄バイオマス発電所の大城章実所長は「安定的に売電できるのはありがたい」と語る。

 同社は従来、廃食油をバイオディーゼル燃料として再利用を進めていたが、県内での需要は少なく、思ったように普及しなかった。再生可能エネルギーのため、FIT制度で20年間は固定価格で売ることが可能となった。廃食油を燃料として再利用する安定したサイクルを確立した。

 発電量は当初、160キロワットの発電機2基だった。18年5月には510キロワットの発電機を増設し、一般家庭約2千世帯の電力に相当する830キロワットの発電が可能となった。今後も発電機の増設を計画。家庭から出る廃食油も活用したい考えだが、県内自治体との連携は進んでいない。大城所長は「一般家庭からも問い合わせがあるが対応できない。カーボンニュートラルなのでとてもクリーンだ」とさらなる普及に期待する。

(仲村良太)


自然の力でまかなう家に

ゼロエネルギーハウス

 亜熱帯の沖縄で電気の使用量が増えるのは8~10月の夏。県内に多いコンクリートの建物は夏の日差しに熱せられ、オーブンのように夜まで室内を暖め続ける。室内を冷やすクーラーの使用量も増える。

 琉球大学が県内外の18社と開発した「ゼロエネルギーハウス」は、室内の断熱性を高めることで暑い夏も寒い冬も室内の温度を一定に保ち、冷暖房の使用量を抑えることを目指す。断熱性を高めた木造などの建物は寒冷地など県外では珍しくないが、県内でコンクリート住宅に導入する技術や資材はまだ少ない。地元企業への技術移転はプロジェクトの大きな目的だ。

琉球大が産学連携で進めるゼロエネルギーハウス。右半分がコンクリート打ちっ放し、左半分は断熱性を高めて比較データを収集している=11日、西原町の琉球大

 建物の中には、外壁に断熱材、屋根には木材、樹脂サッシ、二重ガラスなどを使って断熱性を高めた部屋と、コンクリート打ちっ放しのままの部屋があり、それぞれの気温や湿度の記録を蓄積中だ。3月のある日の記録では、断熱なしの部屋は室温25~28度と変動したが、断熱ありはほぼ26度。夏の記録はこれからだ。

 ゼロエネルギーハウスのもう一つの大きな特徴は、発電所とつながる電気系統から独立し、再生可能エネルギーで建物全体の電気を賄うこと。現在はまだ準備中だが、この技術が実現すれば、山奥や広い畑の真ん中でも自然エネルギーを使って電気を使う施設を造れるようになる。

 琉大内の別の場所では風力と太陽光で発電し、蓄電池にためながら照明などに使う独立系のシステムも実験中だ。工学部電気システム工学コースの千住智信教授の下、この電気システムを研究する博士後期課程の又吉秀仁さんは「計算やシュミレーションが多い研究分野だが、形になるのはとてもうれしい」と話し、新エネルギー時代を支える技術に誇らしげな表情を浮かべた。

(黒田華)


電力使用量 復帰時の4倍

 沖縄電力によると2018年度の県内の電力使用量は約76億2000万キロワット時。沖縄の施政権が日本に返還された1972年度から約4倍に増えた。電力使用量は、人口増加や県経済の発展から、28年度まで年平均で0.3%増えると見込まれる。

 これらの発電の元は大半は石炭と石油だ。県内には水力発電や原子力発電がない分、県外よりもその割合は大きく、18年度は72%を占めた。

 沖電は二酸化炭素(CO2)排出量が石炭などより少ない液化天然ガス(LNG)への転換を進めて排出量を減らす方向だ。

SDGsとは…
さまざまな課題、みんなの力で解決すること

 気候変動、貧困に不平等。「このままでは地球が危ない」という危機感から、世界が直面しているさまざまな課題を、世界中のみんなの力で解決していこうと2015年、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が決められた。世界中が2030年の目標達成へ取り組んでいく。

 「持続可能な開発」とは、資源を使い尽くしたり環境を破壊したりせず、今の生活をより良い状態にしていくこと。他者を思いやり、環境を大切にする取り組みだ。たくさんある課題を「貧困」「教育」「安全な水」など17に整理し、それぞれ目標を立てている。

 大切なテーマは「誰一人取り残さない」。誰かを無視したり犠牲にしたりすることなく、どの国・地域の人も、子どももお年寄りも、どんな性の人も、全ての人が大切にされるよう世界を変革しようとしている。

 やるのは新しいことだけではない。例えば、スーパーのレジ袋を断ること。話し合って地域のことを決めること。これまでも大切にしてきたことがたくさんある。視線を未来に向け、日常を見直すことがSDGs達成への第一歩になる。