豚熱制限解除 農家「ようやく希望」「補償が気がかり」


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 【中部】豚熱(CSF)が発生した養豚場から半径3~10キロ圏内にある養豚場に設けられていた搬出制限が解除されることを受け、当該区域内の農家からは3日、「やっとだ」と安堵(あんど)の声が漏れた。一方で、長期間の制限で生じた損害は大きく、迅速な補償を求める声が上がった。

 豚熱が発生したうるま市と沖縄市の養豚場を中心として、半径3~10キロ圏内の搬出制限区域に51農場があり、約2万9千頭を飼育。半径3キロ圏内の移動制限区域には20農場で約8400頭が飼育されている。

 県は2~3日に、搬出制限区域の解除に向けて感染豚の有無を調べる「清浄性確認検査」を進めた。対象51農場で抗体検査と遺伝子検査をし、全農場で陰性を確認。農水省との協議の結果、解除が認められた。

 本島中部の農家は、飼料会社を通して搬出制限の解除に向かっていることを聞いた。「廃業も考えたほどつらかった。喜びは一切なく、また感染が確認された時に備えて(養豚場の)規模を縮小するつもりだ」と胸の内を明かす。約3カ月間での損害は2千万円にも上るという。「今は、きちんと補償されるのかということが気掛かりだ」と語った。

 確認検査を2日に終えた別の農家は「解除に向けて少しずつ動いている。3カ月近く耐えてきたが、ようやく希望が見えてきた」と胸をなで下ろす。

 豚舎内には体重100キロを超える豚が約10頭いる。「出荷が始まれば忙しくなるだろう。今は消毒に努め、終息を待っている」と話し、新たな感染が確認されないことを願った。

 約3カ月ぶりの正式な解除となったが、出荷を受け入れる食肉処理場側は、制限中に成長し過ぎた豚の解体に頭を抱える。豚の体重が増え、枝肉重量が100キロを超えると、電殺機で解体処理ができず、職員が手作業で解体することになる。そのため名護市食肉センターは搬出・移動制限区域内の豚を1日最大50頭に限定するという。