「先が見えぬ」経済日々悪化 店は閑古鳥、農業、土木も 県観光損失1867億円


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 県は3日、新型コロナウイルス感染症による観光客減少の経済損失額を1867億円と試算した。観光産業を中心に好調だった県内の経済活動が急速に縮小していることに、富川盛武副知事は「未曽有の危機」と強調した。県がこの日発表したのは観光客の減少による経済損失のみのため、イベントの中止や内需の減退などを含めた県経済全体の損失はさらに膨らむことが確実だ。

4月最初の週末の夜にもかかわらず、客がまばらの飲食店=3日夜、那覇市内

■相談件数桁違い

 「日を追って相談が増えていて、先も見えない。初めての経験だ」。沖縄振興開発金融公庫の川上好久理事長は、県経済の先行きに強い危機感を抱く。

 沖縄公庫が1月27日に特別相談窓口を設置して以降、融資や返済条件見直しに関する企業からの相談は今月1日時点で2552件に達している。2001年の米中枢同時多発テロ時に設置した特別相談窓口の件数が1年間で358件だったため、今回の事態はまさに桁違いだ。

 相談件数は2月末の時点で100件程度だったが、3月に入って激増。日々の売り上げの減少が重なり、日を追うごとに状況が悪化していっている。

■閑古鳥

 那覇市内の飲食店は例年なら歓迎会で最も混み合う時期だったはずが、3日夜に店内にいた客は1組だけと閑古鳥が鳴く。観光客の減少に加え、感染拡大に伴う外出自粛で地元客も足が遠のく。店舗関係者は「昨年は連日予約が埋まるほど忙しかったのに」とため息をついた。

 この店舗のグループは売り上げが前年に比べて6割も減少し、時短営業や臨時休業も検討している。県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は「借り入れをしても長くて半年しかもたない。休業、廃業が増えるだろう」と飲食業界の窮状を訴える。

 感染症の影響で結婚式のキャンセルや延期も相次ぐ。ブライダル事業を手掛ける光貴(宜野湾市)によると、4月の挙式予定は5~6割が延期となり、1カ月だけで数千万円の売り上げが消えた。終息が見通せず、延期後の日取りも決まらない状況だ。

 ブライダル事業部沖縄グループの砂辺優成支配人は「長引くと、かなり厳しくなる」と資金繰り悪化への不安を隠さない。

 影響は観光、飲食業にとどまらず、多業種に暗い影を落としている。

 畜産業は、和牛のインバウンド消費の減少や外食産業に客足が遠のいた影響をもろに受けている。3月の県内子牛取引価格は前年同月比約16万7千円(23%)減と大幅な落ち込みとなった。特に2月から1カ月で7万2942円減という急落ぶりで、和牛価格高騰がピークを過ぎてきたところに新型コロナが強烈な追い打ちを掛けている。

■他業種で打撃

 沖縄が一大産地として全国の供給を支えるキクも、3月の彼岸期は1年で最大の書き入れ時だが、販売は計画の82%にとどまり、目標額を3億900万円下回った。単価が下落しているため東京などの県外市場への輸送費込みでは採算が合わず、品質が良く高価なキクだけを出荷する対応で調整している。

 県花卉(かき)園芸農業協同組合の担当者は「一輪でも家庭消費を増やしてほしい」と内需に望みを掛けている。

 土木建設業の現場では、中国との取引停止など物流が停滞する影響で、資材不足が生じている。浦添市内の設計業者によると、トイレの部品や空調機材関係などの納品が遅れている。

 資材不足に加え、新規出店の取りやめや設備投資の見合わせなど、民間の建築発注がキャンセルになる兆候も出てきているという。

 金秀建設の上地千登勢取締役執行役員常務は「工期がずれ込み、引き渡しができない現場もある。受注面でも、ホテルなど建設の計画を見直す動きも増えるのではないか」と厳しい見方を示した。(池田哲平、玉城江梨子、中村優希)

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