清掃でおもてなし23年 83歳の辺土名さんが有終の美 名護市のホテル開業時から後輩の模範に


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 【名護】名護市のホテル「ザ・ブセナテラス」で23年にわたり清掃員として勤務してきた辺土名文子(ふみこ)さん(83)=同市=が3月31日に“引退”した。新型コロナウイルスの影響で宿泊者減など厳しい状況も続くホテル業界だが、従業員たちは「辺土名さんを目標に頑張っていきたい」と送り出した。

20年以上勤めたホテル清掃を引退した辺土名文子さん=3月31日、名護市のホテル「ザ・ブセナテラス」

 辺土名さんは大宜味村への転居に伴い退職する。1997年のホテル開業時から清掃やベッドメークで働いた。2人一組で10部屋前後を手掛けた。午前9時ごろから、夏などの繁忙期は午後8時ごろまでかかることもあったという。

 辺土名さんはペアになった清掃員に指導役をすることも多かった。最近は技能実習生など外国人従業員も多く「ジェスチャーで、手取り足取りで教えてきた」と話す。

 ホテルの中でも清掃員は宿泊客と直接関わることの少ない仕事だ。その中でも、チェックアウトで部屋を後にする客から掛けられる言葉が力になった。「『ありがとう』『また来ます』という言葉をもらい、うれしかった」と顔をほころばせる。

 31日の勤務最終日、朝礼で辺土名さんに花束や記念品が贈られた。清掃などを担当する沖縄ビジネスサービスの古謝秀雄社長は「(80代まで勤務を続けたことは)ギネス級ではないか。技術的にもトップ5に入る仕事だった」とたたえた。辺土名さんは「部屋をきれいにするのは楽しかった。仲間や上司に支えられて、ここまで続けられた」と感謝した。

 同ホテルでも新型コロナウイルスの影響で、客足は低調だという。沖縄ビジネスサービスの松田恒統括責任者は「(辺土名さんの姿が)これから若い人たちの目標になっていくはずだ」と感謝していた。