米軍と取引の業者、高まるリスク 基地内感染者との接触可能性にも不安


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「基地内の感染状況や感染者の行動履歴が不明な分、憶測が飛び交い不安だ」と話す貸倉庫業の男性=3日、本島中部

 【中部】新型コロナウイルスの感染状況について在日米軍が基地ごとの詳細を非公開とする方針を打ち出す中、基地が集中する本島中部では米軍関係の顧客を多く持つ事業者から感染リスクを懸念する声が上がっている。米軍嘉手納基地で感染者が確認され、同基地が一時閉鎖した期間にも米軍関係者と取り引きを続けた業者もあり、無意識のうちに感染者と接触している可能性に不安を募らせる。

 顧客の9割が米軍関係という貸倉庫会社勤務の40代男性は、嘉手納基地が閉鎖中だった3月末も、基地内工事を請け負う業者が倉庫に資材を取りに来たと明かし、「工事は止まっているが人、物の移動は確実にある」と指摘する。

 また、男性は米軍専用の引っ越し業者も継続して請け負っていたと証言する。日本以上に感染状況が深刻な米国や欧州の基地から軍人やその家族が県内に流入している可能性も高い。男性によると、引っ越し業者は米軍関係者立ち会いの下、基地内外の目的地までトラックで荷物を運ぶため、接触時間が長い。基地を出入りするトラック運転手や従業員もマスクをしていない人が多いという。

 男性は感染リスクにさらされながらも働かざるを得ない労働者が県内には多数いると指摘。米軍に対して感染状況や感染者の行動歴の詳細を開示すること、軍雇用員や基地に出入りする業者にマスクなど感染防具の配備を徹底するべきだと訴える。

 基地周辺の飲食店に勤務する30代女性は「来店する米軍関係客のほとんどがマスクをしておらず、接客時は不安」だと漏らす。米軍は徹底した感染防止策を講じていると強調するが基地内の実態は分からないとし「情報だけが命綱。コロナが世界的な脅威となった今、軍の守秘義務より市民の命を守る方がずっと大事だ」と力を込めた。(当銘千絵)