「リスナーのはがきが支えに」ラジオ「民謡で今日拝なびら」を引退した八木政男さんに聞く番組への思い


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リスナーからのはがきに支えられたと振り返る八木政男=3月31日、那覇市の琉球放送

 RBCiラジオの長寿番組「民謡で今日(ちゅー)拝(うが)なびら」で57年間パーソナリティーを務めた沖縄芝居役者の八木政男(89)が、3月31日の放送を最後に番組を引退した。スタジオには、上原直彦さんをはじめとする番組パーソナリティーや中堅・若手民謡歌手らが訪れて、引退を惜しんだ。番組への思いを聞いた。

 (聞き手 藤村謙吾)

 ―引退のきっかけは。

 「今まで入院したこともなく少々の風邪でも番組を休んだことがなかったが昨年、体調を崩して2週間休んだ。初めての経験で、穴を開けて番組に迷惑を掛けてしまう怖さもあり、引退を決めた」

 ―57年間を振り返って何を思うか。

 「『民謡で―』は、1963年に始まった『お国言葉で今日拝なびら」が前身だ。当時自分は、佐川昌夫さんとダブルキャストでパーソナリティーを務めた。始めはラジオ曲のスタッフが書いた原稿に沿ってやっていたが、『民謡で―』に変わり、はがき重視の番組に変わった。はがきは、年間4千枚届くらしい。ファンに大変愛してもらっている番組だと思う。また、うちなーぐちを使えるようになるには民謡を聞くことが一番の近道。番組は、しまくとぅばの普及にも、一定の役割を果たしていると思う」

 ―「民謡で―」のパーソナリティーとして何が印象に残っているか。

 「はがきは、うちなーぐちで書いてきたり、何色も色鉛筆を使って色まんちゃーなものを送ってきたり、人それぞれに書き方があって、楽しかった。ゲストも昔は嘉手苅林昌や山里勇吉、近年は大工哲弘、徳原清文などそうそうたるメンバーが来てくれた」

 ―57年間続いた秘訣(ひけつ)は。

 「マイクを相手にして話すので、お客さんの表情を見てアドリブができる舞台と違って緊張した。上原さんをはじめ万全の準備をしてくれたスタッフの支えと、民謡が好きなリスナーからのはがきがあったから続けてこられた。『やっぱり民謡が大好き』と何度も感じさせられた」

 ―後進に一言。

 「げんちゃん(前川守賢)や與那覇徹くんなどしまくとぅばも芸能もできるいい後輩が出てきているから、安心して譲れる」