「マスクはあと10日分…」「地域医療守れるか」 終わり見えず悲鳴 コロナ感染拡大する沖縄の医療現場


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「那覇市医療の緊急事態宣言」を発表し、県民へ不要不急の外出自粛などを求める那覇市医師会の山城千秋会長(中央)ら=9日午後、那覇市の県庁記者クラブ

 県内で新型コロナウイルスの感染者が増加する中、治療に当たる医療の最前線では疲労やストレスが蓄積し、さらなる感染拡大への懸念が広がる。医療従事者は「マスクがあと10日しか持たない」「地域医療を守れるのか」と不安を口にする。新型コロナの感染者と分からずに診療する可能性もあり、終わりの見えない状況に医療現場から悲鳴が上がっている。

 「(ウイルスを)持ち帰ることを避け、家族にも会えずに病院内の宿舎や当直室に寝泊まりしている」。那覇市医師会の山城千秋会長は、感染者に対応する医療現場が逼迫(ひっぱく)する状況をこう説明した。医療用のN95マスクの在庫は残り10日分しかないという。「このままでは院内での二次感染の危険性が増し、オーバーシュート(爆発的な患者増加)につながる」と指摘し、国や県にマスクと防護服の確保を訴えた。県民には外出自粛を求め「行動を変えてほしい」と繰り返した。

 本島北部や八重山などの離島では、医療体制が整っていないことに不安が高まっている。新型コロナのPCR検査が実施できない石垣島では、検体採取から本島での検査結果判明まで3日ほどかかる。

 八重山地区医師会の上原秀政会長は、結果判明までのタイムラグが院内感染の確率を高めかねないとの認識を示す。「感染者と分からずに診察している可能性もある。医療資源が限られる中、島に来た感染者と濃厚接触したとして医療機関が閉鎖されるのが一番怖い」と不安感を募らせる。

 医師不足による診療制限が深刻な本島北部でも、病床数や感染症の専門医が少ないことを危惧する意見が上がる。名護市内に勤める現場の医師は「病院の垣根を越えて医師を配置してもらうしかない。医療格差があるやんばるで感染者が多発した場合、地域医療が崩壊する懸念がある」と危機感をあらわにした。