さらば博物館カフェ「ウミエラ館」 沖縄・泡瀬干潟保全へ発信「世界の宝、今後も見守る」


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今月末に閉館する、泡瀬干潟を一望できる博物館カフェ「ウミエラ館」の屋良朝敏館長(中央)と共に活動してきた水野隆夫さん(右端)、三井壮さん=沖縄市の同館

 【沖縄】「さらばウミエラ館」―。希少な貝類や海藻類など生物多様性の宝庫である泡瀬干潟を一望できる博物館カフェ「ウミエラ館」が、4月末に閉館する。定期的な観察会を開催するなど、湿地保全に関する国際条約ラムサール条約の登録候補地である泡瀬干潟の保全活動の“とりで”としても知られていた。屋良朝敏館長(70)は「集まる場所がなくなり寂しくはなるけど、今後も精力的に活動していきたい」と前を見据えた。

今月末に閉館する、泡瀬干潟を一望できる博物館カフェ「ウミエラ館」の屋良朝敏館長(中央)と共に活動してきた水野隆夫さん(右端)、三井壮さん=沖縄市の同館

 泡瀬干潟を守る連絡会事務局次長を務める屋良さんが那覇市役所職員の退職を機に2011年4月にオープンした。同干潟で見られる希少サンゴの一種「ウミエラ」と「一緒に生き延びたい、博物館と運命共同体」という願いを込めて命名した。2月下旬から休館していたが、運営費が厳しく閉館を決意した。

 これまでに、海ホタルなどの観察会を約35回、文化講演を約30回開催。埋め立てに反対する訴訟にも関わり、干潟保護を精力的に発信してきた。「泡瀬干潟は一地方の宝ではなく、世界の宝であることを知ってほしかった」と振り返る。05年には、埋め立て予定区域でサンゴの生息状況を調査し、白化現象やオニヒトデによる補食で個体群が縮小しているオトメミドリイシ優占群集、スギノキミドリイシ優占群集、リュウキュウキッカサンゴ群落の3種を発見した。

 常連客で自称「副館長」の泡瀬干潟大好きクラブ代表の水野隆夫さん(75)は「開館当初の予想の3倍は頑張った」と笑う。同館に模型などを寄贈した三井壮さん(72)は「店(博物館)がなくなってもきれいな干潟を一緒に見守っていきたいよね」と語った。

 12日午後1時からは、ラストイベントして干潟の観察会を行う。問い合わせは屋良さん(電話)090(9783)2384。