県春季高校野球総評 ノーシード勢 4強占める 創部3年ウェルネス躍進


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 第67回県高校野球春季大会(県高野連主催、琉球新報社共催)は3月25日から4月5日までアグレスタジアム北谷などで行われた。新型コロナウイルスの影響で無観客実施となり、準決勝以降は打ち切りとなった。大会中止は史上初。シード校や昨春の優勝校が準決勝までに姿を消す混戦の中、日本ウェルネスが春夏秋を通じて初、宮古が5年ぶり、中部商が11年ぶり、沖縄工が2年連続の4強入りを果たし、夏のシード権を獲得した。1点差で勝負が付く接戦もあった一方、前回よりコールドゲームが増えるなど、春の段階での実力の差も表れた。

     中部商業     沖縄工業

打率5割超で勝負強さを誇った中部商の山口慶十
出塁率6割を超え、選球眼の良さが光った沖縄工の國吉涼介

     宮 古   日本ウェルネス

宮古の強力打線でリードオフマンの役割を発揮した川満俊宜
興南戦で完投した日本ウェルネスのエース・比屋根柊斗

■姿消した有力校

 準決勝進出校はいずれもノーシード校だった。

 創部3年で初の4強入りの日本ウェルネスが注目を集めた。夏の甲子園に2度の出場経験を持つ五十嵐康朗監督が昨夏から采配を振るう。「打撃力が高くなっている」との前評判通り、チーム打率は4割7厘。チーム内では5割3分8厘でトップの川平真也が7打点と活躍した。優勝候補がそろう今大会最激戦のDブロックで、昨年覇者の興南に八回コールド勝ちするなど優勝候補に躍り出た。

 4割1分9厘と4強中、最も高い打率を記録したのは宮古。2016年の全国選手権に出場した嘉手納の部長を務めた豊原啓人監督が率いる。上位から下位まで切れ目ない打線で毎試合2桁安打を記録し、3回戦以外は全てコールド勝ち。3回戦の美里工戦は九回裏2死走者なしの土壇場からサヨナラ勝ちするなど粘り強さも兼ね備え、4試合で失策1と堅守も光った。

 第1シードの沖縄尚学を準々決勝で零封した中部商は全体打率は3割3分1厘。4強の中では犠打と盗塁がいずれも13と突出しており、小技を絡めた攻撃が光った。5割2分9厘で打率トップの山口慶十を筆頭に、上原楓翔、仲程海琉らの打順上位が安定の出塁率を誇った。

 沖縄工は打率は2割9分8厘だったが、出塁率6割超えの國吉涼介と約3割の田里王寿がチャンスメークしけん引した。準々決勝までの全24得点中、この2人の生還で13得点を稼いだ。クリーンナップの安座間懐が打率5割の7打点と勝負強さを発揮するなど、上位打線が好機を確実にものにした。

■連合チーム初16強

 県大会で連合チームが16強入りする初の記録をつくった開邦・南部農林・辺土名・真和志の4校連合の活躍も特筆される。

 制球力が高く、変化球の切れが鋭い真和志の仲宗根匠が全3試合で登板し、23奪三振の与四死球8と好投した。2回戦では、第2シードの八重山農林とのシーソーゲームを制した。

 大会前に合同練習を行うことができたのは5回ほどだったという。だが、全体練習の不足は感じさせない伸び伸びとしたプレーが随所にあった。試合中の声掛け、ベンチからの声出しなども活発でチームを盛り上げた。部員不足で毎大会のように複数校の枠組みでのエントリーが続く。今後の励みになるのはもちろん、連合チームが目指すべき、16強越えの一つの目標が定まった。

■夏へは打撃が課題

 臨時休校措置で十分な対外試合ができず、関係者の間では「全体的に投手陣の制球力に懸念がある」との見立てがあった。初戦こそバッテリーエラーや制球難で苦しむチームもあったが、前回大会との比較では与四死球は減少した。今大会から1週間の球数制限が導入されたが、500球の制限に達した投手はいなかった。早めに打たせて取る投球が目立ったのは確かだが、その影響か、三振は前回より大幅に減った。同じく今大会からの申告敬遠は3回あった。

 一方、打撃は本塁打が3本と大幅に減少し、打点も減った。残塁は100以上減ったが、出塁率自体が低くなった可能性もある。前回より試合数が減ったため一概には比較できないが、打撃は全体を通じた課題と言えそうだ。

 併殺は84と過去5年(15~19年)の大会と比べても最も多かった。

 途中中止とはいえ、全国的には部活動の自粛などで大会の開催さえできなかった中で、実戦の機会は大きな糧となったはずだ。浮き彫りとなった課題を念頭に、当面は個別でのトレーニングが主になる。雌伏の時を乗り越え、観客が熱狂する白熱した闘いが夏に見られることを球児とともに心から願う。
 (上江洲真梨子)