有害の泡流出 なぜ米軍は川や街で除去しないのか 地位協定の規定は?


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比屋良川で泡消火剤の回収作業にあたる消防士=11日午後、宜野湾市嘉数(又吉康秀撮影)

 米軍普天間飛行場内の格納庫から有機フッ素化合物PFOS(ピーフォス)を含む泡消火剤が漏出した事故から3日が経過したが、米軍は流出量や原因など詳細を明かしていない。沖縄防衛局と外務省沖縄事務所も情報を得られていない。そんな中、川の浄化などを巡り責任の所在が不明確となり市の消防が独自で除去に当たらざるを得なかった。

 米軍が基地内の汚染処理を優先させ、基地外の汚染の責任を取らなかったことが根本的な問題としてある。一方で松川正則宜野湾市長や県内政党による相次ぐ抗議に対し、田中利則防衛局長は「米側は漏出元(基地内)から対応した。(市の除去活動に)感謝申し上げる」などと米軍の現状を追認するような発言が出た。

 ■危険再び

 宜野湾市消防本部は川に流れた泡消火剤を独自で除去しようとした。PFOSの存在は知らされていたものの、適切な処理方法や量などを知らされず装備もないままだった。基地があるために消防職員が危険にさらされるのは、今回が初めてではない。

 沖縄国際大にCH53E大型輸送ヘリが墜落した際も放射性物質の存在を知らされないまま消火活動に従事し、放射能の危険にさらされた。

 市消防本部の関係者は、泡消火剤の回収作業を「本来は我々のやる仕事ではない」と吐露する。しかし市街地まで泡が迫り、市民に影響を及ぼす恐れがあったために対応に当たった。関係者は、沖縄国際大のヘリ墜落直後は消防が最前線で消火活動に当たったことを振り返り「当時と同じだ。市民を守る使命のある我々が現場で受け皿とならないといけない」と話した。

 ■想定されず

 一般的に汚染除去は原因者が責任を持つのが原則だ。今回の場合、汚染者は米軍だが、防衛局は市を通じ消防に対応を要請した。米軍も流出翌日、基地外で市の消防が浄化作業に当たる様子を見て「私たちにできることはあるか」と市職員に尋ねたという。

 日米地位協定は基地汚染について米軍の原状回復義務を免除しており、県は改定を求めてきた。ただ、この規定は米軍基地内の汚染が対象だ。基地外に汚染が流出した場合については規定がない。

 琉球大の山本章子准教授はこのことが政治的な議論になってこなかったことを指摘する。「墜落事故などの場合は米軍が現場を規制して問題となってきた。今回のように放置するケースは珍しく、想定されていなかった」と話す。その上で「米軍に責任を持たせるのが理想だが、まずは日本政府に速やかで確実な汚染除去を義務付けるのが現実的だ」と述べ、自治体と防衛局の間で協定を結ぶ方法があると提起した。(明真南斗、金良孝矢)