【記者解説】豚熱終息 今後気をつけることは? さらなる防疫体制が必要


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 豚熱(CSF)の感染拡大を防ぐため豚の出荷禁止や車両消毒などが義務付けられる制限区域が、13日をもって全て解除され、沖縄県内で発生した豚熱は事実上「終息」となった。98日間にわたる粘り強いウイルスの封じ込めが奏功し、県内農家や関係機関にとって養豚業の再出発へ向けた大きな節目を迎えた。

 だが、農家の衛生管理を底上げしなければ豚熱の再発を繰り返しかねない危うさは続いている。海外で猛威を振るう「アフリカ豚熱(ASF)」をはじめ、今後もさらなる家畜伝染病の侵入リスクがある。再発防止のため、徹底した飼養衛生管理が求められる。

 1月8日に最初の感染が確認されて以降、7事例10農場で1万2381頭の豚が殺処分され、養豚業界は大きな打撃を受けた。発生農場での全頭殺処分に加え半径3キロ圏内は養豚場から豚を動かすことが一切禁じられる「移動制限区域」、半径3~10キロ圏は豚の出荷を原則認めない「搬出制限区域」として規制。区域内に入る道路に消毒ポイントを設置し、ウイルスを封じ込める防疫措置を図ってきた。

 感染経路を特定する作業では、養豚農家の衛生管理の低さが感染を許した要因として指摘された。豚熱が最初に確認された農場では、豚の不審死が出てから通報まで遅れが生じ、豚に与える食品残さ(残飯)も非加熱だった。農家が守るべき「飼養管理基準」の徹底について、行政の指導不足も明らかになった。

 事実上の豚熱終息となったもののウイルスが潜伏している懸念はぬぐえず、沖縄本島では予防的なワクチン接種が続けられる。ワクチンを接種すれば豚が発症することはなくなるが、ワクチンに依存して飼養衛生管理が緩めば、アフリカ豚熱など別の感染症の侵入を許しかねない。各農家が防疫の意識を高めるのはもちろんのこと、県や関係機関が農家の指導を徹底し、さらなる防疫体制の構築が求められる。
 (石井恵理菜)