泡消火剤の流出が浮かび上がらせた問題 明るみになるケース少なく


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【東京】米軍普天間飛行場からの泡消火剤の大量流出が、米軍基地と環境汚染を巡って長く続く問題を浮き上がらせている。防衛省は14日、日米地位協定に関する環境補足協定に基づき、漏出事故調査のための基地立ち入りを初めて米側に要請した。根拠規定があるとはいえ、環境汚染の調査目的での立ち入りには依然高いハードルがある。米軍の対応が焦点になるとともに、補足協定の実効性が問われそうだ。

 米側に排他的管理権を認める日米地位協定などにより、基地内の汚染把握は困難な現状がある。泡消火剤が住宅地で空中を飛び交った今回の一件のように、大規模な被害が発生直後に“可視化”されるのはまれだ。基地内で燃料漏れなど深刻な環境汚染が発生しても、公表されるかは米軍の裁量に委ねられ、日本政府にも知らされず後に情報公開請求で明るみに出るケースは少なくない。

 2015年に締結された環境補足協定に対しては、立ち入り実績が乏しいことなどから実効性に疑問が付きまとってきた。日本政府が補足協定に基づく立ち入り要請に初めて踏み切ったことについて、防衛省関係者は「事態を深刻に受け止めているということだ」と説明する。

 一方で外務省関係者は「立ち入りできるかどうかという結果が全てであり、どの手続きを使うかは二の次だ」と語り、環境補足協定以外の日米合意も視野に米側と協議する考えを示す。

 泡消火剤の流出では、除去作業などの過程で生じる費用を日米どちらが負担するかという問題もある。日米地位協定には請求権に関する規定があるが、基地周辺住民による米軍機騒音訴訟のように、被害賠償が確定しても米側が支払いに応じないケースもある。河野太郎防衛相は14日の記者会見で「費用を後で米軍に払ってもらうなり何なりということは考えたい」と述べたが、不透明感が漂う。