「漁労の知恵を形に」 佐良浜活性協が次代へつなぐ冊子


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伊良部島の漁業を紹介する冊子3部作

 【宮古島】大漁旗をはためかせ遠く南方に旅立つ船団。豊漁と無事を祈って見送る家族。釣り上げられキラリと輝くカツオ―。佐良浜地区漁業集落活性化協議会はこのほど、伊良部島の伝統漁業や文化、歴史を描いた冊子3部作をまとめた。監修した同協議会の普天間一子さん(60)は「漁業者の担い手が少なくなる中で島の漁師と漁労の知恵や支える家族に地域、歴史を形に残したかった。これからを支える子どもたちに見てもらいたい」と話した。

 冊子はカツオ漁師の暮らしを描いた「佐良浜漁師の一日~カツオ編~」(1600部発行、全15ページ)と「同~アギヤー編」(1500部発行、同)、「佐良浜漁師の南方漁」(2千部発行、全19ページ)の3部作。アギヤーは県内で唯一、伊良部島で今も続くグルクンの伝統追い込み漁。水深30メートルで網に追い込む様子などを「アギヤー編」で紹介した。

監修した冊子を持つ普天間一子さん=9日、宮古島市伊良部

 またパラオなど、南方漁が盛んだった時代の漁師の仕事や家族を描いたのが「南方漁」だ。南方にいる夫や息子を思い祈る家族の様子を伝えている。「カツオ編」は一本釣りで大物のカツオを釣り上げる漁師らを生き生きとした文章と柔らかいタッチの絵で描いた。普天間さんらが漁師や家族に取材してまとめた。自分自身の中学の卒業式に出席できず出港した漁師の話や、南方に出ている父からの国際電話に驚いて切ってしまった話。それぞれの物語が紡がれている。

 普天間さんは「島のみんなが私の先生。間違えてはいけないから丁寧に話を聞いた。カツオ漁にもアギヤー漁にも同行した」と振り返る。

 冊子制作は宮古島市の地域活性化モデル地区支援事業補助金を活用して、2018年から3年がかりで作った。協議会はほかに、アギヤー漁の様子を再現したジオラマや部位ごとに分けられるカツオの実寸大模型も作った。

 今では国内外で当たり前に行われるパヤオ漁も、佐良浜の漁師たちが考案したとされている。

 普天間さんは「まだまだ紹介しきれていない物語や知恵がたくさんある。冊子が佐良浜漁師の魅力を少しでも伝えられたらうれしい。子どもたちの将来の夢に漁師が入るように、これからも取り組みたい」と語った。

 佐良浜地区漁業集落活性化協議会は完成した冊子を無料で配布している。島外、県内外も希望者が送料を負担すれば郵送する。

 問い合わせは伊良部漁業協同組合(電話)0980(78)3119(普天間)。
 (佐野真慈)