社会
沖縄からSDGs

働きがいも 経済成長も【SDGsって? 知ろう話そう世界の未来】8


 「ブラック」と言われる低賃金や長時間労働、子育てや介護との両立など働き方に起因する問題は多く根深い。一方で経済協力機構(OECD)によると2019年の日本の実質経済成長率は0.7%で、世界の2.9%との差は大きい。新型コロナウイルス感染症の影響で先行きにはさらに不安が広がる。SDGs(持続可能な開発目標)の目標8は「働きがいも 経済成長も」。それぞれの人の能力を最大限に生かす組織づくりや働く場づくりをすることで、組織をより発展させる事例を紹介する。



氷河期世代の就職を支援

ハローワーク那覇

 雇用環境が厳しい時期に就職活動をした30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」。政府は2020年度から3年間にわたる「就職氷河期世代支援プログラム」で、氷河期世代の正規雇用者を30万人増やすことを目指している。県内でもハローワークへの専門窓口設置が昨年から先行して始まったが、求職者と企業のミスマッチなど課題もある。新型コロナウイルス感染拡大による影響も懸念されている。

 沖縄労働局によると、県内の氷河期世代で不本意ながら非正規で働く人は約8400人、無業状態の人は約5450人いる。

 ハローワーク那覇に昨年10月に設置された「ミドル支援窓口」は、4月13日までの約半年間で60人を支援し、8人が採用された。求人は839人あった。就職率は13.3%。2018年度の県全体のハローワークにおける就職率34.2%に比べ、厳しい数字だ。

 ハローワーク那覇の守内英樹次長は就職率が低い要因について「県内では正社員の求人が少ない上に、氷河期世代の方はこれまでキャリア形成が難しく、企業が求める人材像とのミスマッチが生じている」と指摘する。求職者は事務職を求める傾向が強いが、求人が多いのは医療福祉や運輸関係で、職種のミスマッチもある。ハローワークは企業に条件の緩和を依頼し、求職者には幅広い仕事へ目を向けてもらうセミナーを開催してきた。支援を受けて介護職に就いた人から「やりがいがある」との声も寄せられたという。


「ミドル支援窓口」の求人情報を見る求職者=14日、那覇市おもろまちのハローワーク那覇

 だが3月からは新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光業などの求人が減り、ハローワークもセミナー開催を控えている。守内次長は「企業に助成金などを活用して雇用を維持してもらいながら、早めに感染拡大が収まり経済が回復できたらいい」と厳しい表情で話した。

 政府は地方自治体に対しても経歴不問の中途採用試験などに取り組むよう要請している。城間幹子那覇市長は2月、SDGsに関する施策の一環として「就職氷河期世代の職員採用に門戸を開く」との考えを示した。試験の時期や採用人数など具体的なことは検討中だが、他の自治体に波及することが期待される。

(伊佐尚記)




能力を発揮する環境を整備

瀬良垣 香織さん 沖縄科学技術大学院大学 メディアセクション

 「不得意を克服しなくても貢献できると教えてもらった」。沖縄科学技術大学院大学(OIST)=恩納村=のメディアセクションで働く瀬良垣香織さん(44)は自信と意欲に満ちた表情で語る。

 デザイナーとして催しのポスターやチラシ、論文用の図まで手がけ、洗練された仕上がりで多大な信頼を集めるが、アスペルガー症候群のため文字や耳からのコミュニケーションが苦手だ。以前は「なぜ分からないの」「当たり前のことができない」などと言われて萎縮し、自分を責め、多くの職場を転々としてきた。

 「あなたの当たり前は私の当たり前じゃない」と気付いたのは、OISTに来てからだ。学生だけでも出身は48の国・地域におよび、文化も価値観も多様な人たちが共に働く学内では「分からないから教えて」「どうしたらできるのか」と相手を受容し尊重しながら、仕事をうまく進める方法を探る文化が根付く。


洗練された作品を次々と仕上げる瀬良垣香織さん(中央)と、働きやすい職場環境を作るメディアセクションの大久保知美さん(右)、中尾享二さん=9日、恩納村の沖縄科学技術大学院大学

 人事担当の永井あゆみさんは「人にはそれぞれ事情がある。最大限の力を出してもらうにはどんなサポートが必要か、本人や関係部署で話し合い柔軟に対応する」といい、障がいを特に意識することはないという。瀬良垣さんの部署では、苦手な電話対応は他の人が代わり、デザインの調整は言葉ではなく図で示し、瀬良垣さんをよく知る職員が仲介に入ることもある。その中で瀬良垣さんは能力を開花させ「なくてはならない人」(同セクションの大久保知美マネジャー)になった。

 「何ができる?」「どうしたらやってもらえる?」と挑戦を促される環境で「『できない』と天井を作るのはやめた」と笑う瀬良垣さん。「障がい者自身もやりたいことや手伝ってほしいことは伝えよう」と仲間にエールを送った。

(黒田華)




労働力の4割 非正規



 県の労働力調査によると就業者数は2019年度(平均値)、前年度より1万9千人多い72万6千人で復帰後最多となったが、非正規職員率は約4割になる。非正規は前年度から1万5千人増え、就労者数の増分に近い。非正規は女性が約7割を占め、女性の賃金は男性の約8割にとどまる(沖縄労働局)。

 障がい者雇用は18年、中央省庁で採用人数の水増し問題が発覚。ことし3月、共同通信の調査で全国自治体の4割は知的や精神の障がい者を1人も雇用していないことが分かった。誰もが能力を発揮して安定して働ける環境はまだ遠い。



SDGsとは…
さまざまな課題、みんなの力で解決すること


 気候変動、貧困に不平等。「このままでは地球が危ない」という危機感から、世界が直面しているさまざまな課題を、世界中のみんなの力で解決していこうと2015年、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が決められた。世界中が2030年の目標達成へ取り組んでいく。

 「持続可能な開発」とは、資源を使い尽くしたり環境を破壊したりせず、今の生活をよりよい状態にしていくこと。他者を思いやり、環境を大切にする取り組みだ。たくさんある課題を「貧困」「教育」「安全な水」など17に整理し、それぞれ目標を立てている。

 大切なテーマは「誰一人取り残さない」。誰かを無視したり犠牲にしたりすることなく、どの国・地域の人も、子どももお年寄りも、どんな性の人も、全ての人が大切にされるよう世界を変革しようとしている。

 やるのは新しいことだけではない。例えば、スーパーのレジ袋を断ること。話し合って地域のことを決めること。これまでも大切にしてきたことがたくさんある。視線を未来に向け、日常を見直すことがSDGs達成への第一歩になる。






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