中小企業相談、2カ月で417件 識者「業種問わず命と生活支えて」


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 中小企業の経営改善などをサポートする「県よろず支援拠点」に寄せられた新型コロナウイルス関連の相談件数が、2月10日~4月20日の約2カ月間で計471件に上っている。観光客を相手としている飲食、宿泊、サービス業の事業者からの相談が特に多く、そのほとんどが資金繰りなどで行き詰まり、支援策の紹介を求めるものだった。

 事業継続に不安を持つ経営者から、業態変更の検討について相談が寄せられることもあるという。同支援拠点チーフコーディネーターの上地哲氏は「観光客相手の商売だったものを、地元の生活者が必要としている製品を供給する方にシフトしたいと、製造業や農業への変更を検討する事業者もいる」と話す。

 県よろず支援拠点は中小企業の経営者や税理士、社会保険労務士などが支援員として在籍し、企業の相談に複数の相談員がチームで対応する。首里城火災、韓国人観光客の激減、豚熱などが続き、新型コロナ感染症の拡大で中小企業の相談は急増している。

 緊急事態宣言が沖縄にも適用され、資本規模の小さい中小・零細事業者の経営環境がさらに苦しくなる事態が想定される。上地氏は「事業者は先が見えない中でどうしていいか分からず迷っている。会社の持つ経営資源や強みをどう生かせるのかを見極めて対話していきたい」と語った。

県よろず支援拠点チーフコーディネーター、上地哲氏に聞く
 

上地 哲氏

 ―中小企業が置かれている状況は。

 「リーマン・ショックや東日本大震災でも大変な思いをしたが、それ以上の状況だ。マーケットを外に求めても、世界中に感染が広がる中で行き場がない。県内企業のほとんどが中小、小規模であり、一握りの大企業では県経済を支えることはできない。中小、小規模事業者こそが県経済を支えているという意識を持って県や国、行政が支援してほしい」

 ―支援策の課題は。

 「行政が支援策を次々と出しているが、手続きや書類の煩雑さがあり、遅れている。中小企業セーフティネット資金も、当初は創業1年未満は受けられないなどのハードルがあった。若干改善されたが、国の雇用調整助成金などでも膨大な資料を作成しなければならず、コストや労力がかかる。さらには、情報が届いていないと感じている。国には新聞やテレビ、ラジオを通して、支援策の広報を積極的にしてほしい」

 ―借り入れとなることへの懸念は。

 「借金はこれ以上増やしたくないという企業は多い。ただ、買い手が戻ってくるのか見通せない状況の中で、1円でも多く現金を持っておくことが必要だと考える。その上で、国や県は1~2年、5年後を含めてさらなる支援を考えないといけない」

 ―行政への提言を。

 「金融機関や行政は業種を問わず、貸し付けや融資、雇用の助成金を含めて支援してほしい。何よりも大事なのは命で、命を支えているのは生活だ。例えば風俗事業者であっても納税者であり、従業員を抱えている。その方々に金融機関や役所が断ると支援がなくなる。コロナの感染拡大は災害と同様だとの認識で、中小、小規模事業者への支援策を展開してほしい」
 (聞き手 池田哲平)