日本は「子どもの使い」? 普天間の汚染土壌採取せず 補足協定の欠陥とは


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政府、沖縄県、宜野湾市の職員が立ち会う中、土壌の入れ替え作業を行う米軍=24日、宜野湾市の米軍普天間飛行場(防衛省提供)

 米軍普天間飛行場内から泡消火剤が流出した問題で、米軍が24日、発生場所の格納庫近くの汚染土壌を入れ替えた。日本政府、県、宜野湾市の職員が立ち会ったが、日米地位協定の環境補足協定に基づき求めている土壌のサンプル採取はできず、目の前の作業を“見守る”状況が約6時間半続いた。

 地位協定の環境補足協定は2015年に日米両政府が沖縄の負担軽減の目玉として締結した。10日に米軍普天間飛行場で泡消火剤流出事故が発生し、環境事故を受けた事例としては同協定に基づく米軍基地への立ち入り調査が初めて実現した。だが県が求めていた基地内の土壌調査は、協定締結時に交わされた日米合同委員会に手続きが定められているにもかかわらず米軍が拒否し、実現しなかった。米側の同意が得られなければ必要な調査も実施できないという協定の根本的な欠陥が浮き彫りになった。

 補足協定に基づく日米合同委員会合意は、日本政府や自治体が基地内の水や土壌の採取を「申請できる」と記載している。一見、日本政府や県、市町村にはサンプル調査の権利があるように見えるが、米側が同意しなければ行使できない。補足協定はあくまで「補足」であり、「本体」とも言える日米地位協定が米軍に基地の排他的管理権を認めていることが根底にある。

 今回、流出した泡消火剤にはPFOS(ピーフォス)などの有機フッ素化合物が含まれる。これらは自然環境ではほとんど分解されないため、地中に残っていれば地下水を何十年も汚染し続ける。汚染源の除去に向けた土壌のサンプリング調査はその防止に不可欠だ。

 合同委員会合意は日本側によるサンプリング調査だけでなく、米軍自身によるサンプリング調査の実施も記載している。だが今回、米軍自らが調査を実施したという報告はなく、その結果が日本側に提供される見通しもない。

 今回、汚染があった「可能性がある」と米軍が認識する区域の土を除去し、その作業に日本政府を立ち会わせた。だが除去した土も、除去後に現場に残った土も、日本側は分析できない。事故による汚染がどれほどあったのか、また米軍が除去した後の土地にはもう汚染はないのかは、何も明らかにされていない。 (島袋良太)

◆米軍の裁量増やすだけ 山本章子琉球大准教授の話

 米軍普天間飛行場内の土壌採取ができなかったことは環境補足協定、それに連なる日米地位協定では、結局は米側の恣意(しい)的な判断でいかようにもなるという問題を改めて浮き彫りにした。米側が認めないと日本側は何もできない。沖縄防衛局は土壌を採取できないと分かりながら県に立ち入りをさせたのなら、形式的に国が努力していると見せるためのアリバイ作りだったのではないか。

 日本は、米軍が言うがままに従う子どものお使いのようなものだ。地位協定自体がそのような内容であり、協定の見直しに触れないように運用改善を繰り返してきたツケが今回また出た。運用改善、補足協定は米側が認めないとできないこと、米軍の裁量の余地を増やすことでしかない。環境補足協定を結ぶことで米軍の特権を温存した結果が今回につながっている。
  (談)
 (国際政治史)