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<佐藤優のウチナー評論>新型コロナと大学 学業継続に県は支援を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 新型コロナウイルスによる感染拡大の影響によって、大学が危機に直面している。

 多くの大学が学生の校内への立ち入りを禁止もしくは厳しく制限している。この春学期、筆者は京都の同志社大学神学部と大学院神学研究科の学生を教えている。同志社大学は4月初めに7月18日までの講義はオンラインで行うことを決めた。筆者の担当科目は単位にならない特別講義なので、対面での講義は可能な状況になったときに集中的に行うことにし、現在は最低週1回、3時間程度のオンライン講義を行っている。

 神学は人生の意味や死について取り扱う学問だ。新型コロナウイルス禍は、神学にとって重要なテーマなので、学生たちは真剣に課題に取り組んでいる。東京から京都に月1回通っていたときよりも、学生を指導する時間が長くなり、普段よりも効率的に講義を進めることができる。このペースだと1年分のカリキュラムを3カ月で消化できる。対面授業が再開した後も、適宜、オンライン講義を活用した方が、学生の学力向上に資すると思うようになった。

 〈各地の学生や教員からは、携帯電話各社が発表した、学生の通信料金負担の軽減枠の拡大を求める声が噴出。ネット上では学費の一部返還を求める署名活動も始まった。キャンパスに出入りできず対面授業を受けられない不満や、学生が通信環境を整えるための費用として返還することなどを訴えている〉(19日「朝日新聞デジタル」)ということだ。

 同志社大学神学部は、希望する学生に家庭用Wi―Fiを貸し出している。筆者は学費の減免は筋が違うと考える。なぜなら、このような困難な状況の中でも大学は教育と研究を続けているからだ。大学が授業料減免に踏み切った結果、経営が困難になると、教育、研究の質が低下する。経営基盤の弱い私立大学の場合は、倒産する可能性すらある。そのような状況になって、被害を受けるのは学生だ。

 この際に大学が不要不急の経費を削減するのは当然のことだ。その上で、学生と保護者の経済状況を考慮して、学費納入が困難な人に対しては、年度を超えての延納を認める、貸与型の奨学金を大幅に拡大するなどの措置で、危機的状況を乗り切るしかないと思う。対面授業が行えない状況が秋以降も続く可能性もある。そうなった場合には、県や国による本格的な支援が必要になる。

 県が沖縄の大学生の状況について調査し、学業の継続ができるように全力を尽くしてほしい。高等教育を受け、専門知識を持った人材を育成することが、沖縄を強くする上で役に立つ。教育はすぐに結果が現れない。今、沖縄の大学生が学業に専心できない状況が生じると、10年後、20年後の沖縄が大きな損失を被(こうむ)ることになる。新型コロナウイルスに関連する教育対策には長期的視点が重要になる。

(作家・元外務省主任分析官)