DV被害者「10万円もらえないの?」 世帯ごと給付に疑問、救済措置も「不十分」


この記事を書いた人 Avatar photo 米倉 外昭
総務省がホームページに示した申請書の様式案。世帯主を受給者として申請するよう求めている

 新型コロナウイルス感染拡大を受け政府が打ち出した一律10万円の現金給付では、世帯主の口座に家族分がまとめて支給される仕組みとなっている。さまざまな理由で世帯主と離れて暮らす人から「(世帯主の)夫に使われてしまう」といった批判や疑問の声が、りゅうちゃんねる取材班に相次いでいる。

 「私と娘を捨てた夫に、2人分も支払われるということですか」。沖縄市の女性(49)から取材班に疑問の声が届いた。女性の夫は4月上旬、荷物を持って家を出て行った。コロナウイルスの感染が拡大していたため、酒を控えるよう注意すると激高し、そのまま連絡が取れなくなったという。

 総務省によると、政府の一律10万円給付を受けることのできる「受給権者」は「その者の属する世帯の世帯主」と定義し、家族分の給付金はまとめて世帯主に振り込まれる。家庭内暴力(DV)などの被害を受けて、世帯主から逃れている人などは「証明書」や「確認書」を提出すれば、世帯主ではなく申請者に振り込まれる救済措置が取られる。

 だがDVを受けながら同居する夫婦や、疑問を寄せた女性のように住民票はそのままで、世帯主と別居する夫婦も多い。女性は「具体的な申請方法が何も分からない」と、政府の対応が不十分だと指摘した。

 世帯主にまとめて給付する仕組みについて、SNS上でも疑問の声が相次いでいる。「会話ができる家族ばかりではない。分け合う姿は、わが家では想像できません」「うちの旦那はDVではないけどモラハラなので絶対くれない」といったように、ハッシュタグ「#世帯主ではなく個人に給付して」を付けて、現状の仕組みを変えるよう求めている。
 (阪口彩子)