【記者解説】「未曾有の危機」 どうなる?沖縄の観光戦略


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 3月の入域観光客数は前年同月より48万7700人少ない過去最大の減少数となり、新型コロナウイルスの影響で、まさに前例のない危機に直面している。

 政府が緊急事態宣言を発令した4月はさらに悪化することが確実で、観光産業にとって書き入れ時となる5月のゴールデンウイークも収入は見込めない。夏場になっても観光客の回復は難しいという見方が事業者の間に広がっており、県としても「未曽有の危機」(渡久地一浩県文化観光スポーツ部長)と警戒を強める状況となっている。

 2019年度の観光客数は前年度比5・3%減の946万9200人となった。減少率は過去2番目の大きさとはいえ、年度前半の“貯金”があり、5%台の減少にとどまったといえる。1月は前年同月比3・4%減、2月は同23・5%減、3月は同55・4%減と悪化の一途をたどり、直近3カ月の急落が年度全体の数字を押し下げた。

 これが長期化して前年の半分以下という落ち込みがさらに続けば、県経済を牽引(けんいん)してきた観光産業は危機的状況に陥る。21年度の観光客1200万人を掲げてきた県は、入域観光客数などの目標値を再検討するとしており、観光戦略の練り直しも迫られている。

 観光客の激減でホテルや旅行社などの事業者はほぼ休業状態となる。観光バスやレンタカー、観光施設、土産品店など直接的な影響を被る業種に加え、ホテルへの食材納入業者や清掃・管理会社など間接的な影響も広がっていく。

 県内でアクアレンタカーを展開するニューステップ(那覇市)、沖縄にグループ会社があるWBFホテル&リゾーツ(大阪)が民事再生を申請するなど、経営が追い込まれている企業も出ている。観光客が回復するまで企業が体力を維持できるかが課題となり、観光業界の支援策が求められる。 (中村優希)