【深掘り】3カ月で需要が消失… 深刻さ増す沖縄の観光産業


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新型コロナウイルス感染拡大の影響で大幅減便となり、空欄が目立つ石垣島と周辺離島を結ぶ定期船時刻表=27日、石垣港離島ターミナル

 中国政府が新型コロナウイルス感染症の対策として団体旅行を規制し、沖縄観光に直接的な影響が生じた1月27日からちょうど3カ月が経過した。沖縄観光は昨年までの好調さから一変し、2月以降の急激な落ち込みで19年度の入域観光客数は8年ぶりに前年を下回った。観光需要の消失と先が見えない不透明さから、観光産業を取り巻く状況は日に日に深刻さを増している。

 大幅に減少した空と海の便の回復は見通せていない。沖縄を発着する海外航空路線は3月24日に全便が運休となった。国内航空路線も38・7%減少した。18年度に125万人が利用したクルーズ船は、3月の寄港は皆無となり、4月もゼロが確定している。

 ■海空の便縮小

 運休・減便が続く航空路線網について、大手航空会社の担当者は「20年度中に便数が回復するとは考えていない。来年の2~3月ごろにようやく国内線の予約率が6~7割に戻るとみている。国際線の回復はもっと遅くなるだろう」と厳しい見通しを示す。

 大型クルーズ船については、沖縄総合事務局によると5月は28回の予定があるもののキャンセルの公算が大きい。水際対策として入国者に14日間の待機を政府が要請していることから、クルーズ船関係者は「国がゴーサインを出さないと、上陸して1日で観光地を巡るクルーズ観光は成り立たない」と肩を落とす。

 5月6日まで緊急事態宣言が出され、大型連休中の観光需要はほぼ消失した。沖縄観光のピークの夏場についても懸念する声が強い。県レンタカー協会によると大型連休中の予約は前年の1割以下で、予約を受けていない社もある。

 沖縄ツーリストマーケティング戦略本部の安部潤本部長は「日本全体の感染が終息し、警戒レベルが下がらなければ海外客は戻ってこない。終息しても人々の価値観や行動が変わる可能性もある。不確定要素が多すぎて先が読めない」と話した。

 ■離島経済に打撃

 新型コロナは離島経済にも大打撃を与えている。

 15年の伊良部大橋開通後、観光客が大幅に増えた宮古島市。「宮古ブルー」と呼ばれる青い海に魅せられてリピーターも多いが、宮古島美ら海連絡協議会の加盟店はダイビングなどの営業を5月6日まで自粛している。例年なら夏場と匹敵する書き入れ時の売り上げがなくなり、担当者は「死活問題だ」と嘆く。

 世界自然遺産登録を目指す竹富町の西表島だが、新型コロナの影響で5月に予定されていた登録勧告は先延ばしになった。「西表アイランドホテル」は、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な島での感染発生を防ごうと、5月10日まで客の受け入れを停止した。連休後から夏までのの修学旅行は、予定されていた全てが中止・延期となった。

 上亀直之代表は「7~10月が年間の半分以上を稼ぐ時期だが、この時期に入り始める夏の予約が入ってきていない」と声を落とした。

 石垣島と周辺離島を結ぶ船舶も大幅減便となり、石垣港離島ターミナルは閑散としている。運航する八重山観光フェリーの大松宏昭社長は「船を出せば出すほど赤字だ」と頭を抱え、「終息後の観光マインドをどう回復するか、行政も含めて考えていかないといけない」と強調した。