総体中止の波紋(上) 選手に衝撃「3連覇の夢が」「頭の整理つかない」


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昨年の南部九州総体の団体戦で連覇し、トロフィーなどを手に喜ぶ首里のメンバーら。3連覇への夢がついえた=那覇市の県立武道館

 全国高校総体が史上初の中止となった。全国の舞台を夢見て努力を積み重ねてきた選手や指導者らは失意に沈む。初の出来事に戸惑いながら、県総体開催に望みをかけ、残された舞台でパフォーマンスを発揮しようと自らを奮い立たせる選手たち。競技関係者は、どうにか活躍の場を設けようと策を練る。全国総体中止の影響をまとめる。

■3連覇の夢消える

 昨年の南部九州なぎなたで団体連覇を成し遂げた首里は県勢初の総体3連覇への挑戦が絶たれた。主将の宮城昭奈は「自分の代でも優勝したかった」と悔しさを隠せない。

 1年からレギュラー入りし、2018年の東海総体、昨年の南部九州で連覇を達成。先輩らの思いも胸にチームをけん引してきた。昨年度まで指導に当たった大城エリカ前監督は「重圧はすごかったと思う。みんなのモチベーションを引き上げるにはどうしたらいいか、悩んでいる時期もあった」と振り返る。全体ミーティングを重ね、雰囲気づくりに力を入れる姿を見てきた。「私も心が痛い」と話した。

 宮城は昨年の高校新人大会で団体だけでなく個人、演技も優勝。多種目で全国トップを狙い、集大成の舞台となるはずだった。

 「仕方ない。だけど高校最後の全国優勝を果たしたかった」と寂しがる。その上で「チームメートと県総体は頑張ろうと連絡し合った。全国はなくなったけど、全力で頑張りたい」。気丈に前を向こうとしている。

■頭の整理つかない

 空手形の新城志(コザ)は目標を失い「空手を続けるか分からない。虚無みたいな状態」と覇気のない声で話した。

 高校1年生の時から県や九州で頂点に立つなど頭角を現したが、昨年の全国総体は動きが硬く、まさかの1ラウンド敗退。「全国で勝つ力をつける」と毎日6時間の猛練習を始めた。

 筋トレで体重を5キロ増やしてパワーを増し、世界王者の喜友名諒の動画で見せ方を学んだ。昨年11月の全九州新人大会は個人と団体で2冠。「全国で勝てるレベルまできている」と総体優勝の手応えを得ていた。

 同じく頂点を狙った3月の全国選抜に続いて挑戦の機会が失われた。「本当に出たかった。頭の整理がつかない」と立ち上がるきっかけをつかみかねている。

■最後だから

 北部農林レスリング部でただ一人の3年生の仲泊将太郎は消防士を目指すため、競技は高校までと決めている。

 高校1年生から出場している全国総体で上位入賞はない。昨年、1学年先輩の渡口妃龍が3位入賞を果たし「かっこよかった」と憧れた。兄の勇之介から主将を引き継いだことしは「自分が勝つ姿を後輩に見せたい」と気合十分だった。

 中止決定後もできる練習は続けている。県総体に期待しているからだ。「最後だから大人になって後悔したくない」と帰省した兄ともトレーニングを続けた。「今は頑張ることしかできない」と自分に言い聞かせるように何度も口にした。
 (謝花史哲、古川峻)