総体中止の波紋(下)スポーツ推薦どうしたら…高3、進路見通せず


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 全国高校総体が中止になり、進学を控える県内の高校3年生や指導者からは「大学にアピールする場がなくなった」「人生を左右しかねない」と進路への影響を懸念する声が聞かれる。各競技とも例年は春先に実施されている全国選抜大会も軒並み中止だった。九州大会を含め、ほぼ試合がない状態が続いている。大学や実業団のスカウトと選手の“出会いの場”が失われ、双方とも今後を見通せない状況が続く。

休校中も自主練習に励む那覇西男子サッカー部の山川樹主将。「冬の選手権に向けて切り替えたい」と気丈に語る=28日、浦添市内(本人提供)

■“冬”前に入試終了

 「スポーツ推薦」の入試方法は大学によってさまざまだが、春の全国選抜大会と夏の全国高校総体の2大大会でのパフォーマンスが影響することが多い。

 関係者によると春の選抜大会がある競技の場合、世代交代後の最初の全国舞台となる選抜はスカウトが選手に接触する始まりとなる。ある指導者は「1、2年の頃から全国上位に入っていれば別だが、先輩がいてなかなか難しい。最上級生になり、選抜でスカウトに声を掛けられ始め、全国総体の結果で推薦が決まることが多い」と説明する。

 私立大では夏から秋に出願を受け付け、2次、3次の募集がある場合は秋の国体の結果なども加味される。バスケットボールやサッカーなどは冬の全国大会もあるが、その前に入試日程を終える大学が多い。それだけに、全国総体は選手の進路決定に大きなウエートを占める。

 那覇西男子サッカー部では3年生約40人のうち、半分ほどがスポーツ推薦を希望しているという。平安山良太監督は「冬の選手権の時には生徒が行きたい大学の募集が終わっていることも多い。今後どうなるのか…」と選手の将来をおもんぱかる。推薦志望の山川樹主将も「アピールの場がなく、正直焦りもある。人生を左右されかねない」と悲痛な声を上げる。

■大学にコンタクト

 大学側も困惑している。これまで多くの県勢が進学してきた法政大重量挙げ部の平良朝順監督は「通常は選抜から選手を発掘するが、全国総体もなくなった。監督21年目だが、初めてのケースだ」と選手の実力を評価する場がないことに戸惑いを隠せない。「現状では過去の成績でしか評価できないが、3年時に伸びる子は多い。大学としてもどう推薦を進めるかまだ決められていない状況だ」と苦悩を明かす。

 県内指導者の間では、進路先と選手をつなぐための動きも出始めている。「こういう状況なので、今月から大学にコンタクトを取り始めた」。そう語るのは興南男子バスケ部の井上公男監督だ。親交のある大学関係者にに連絡を取り、選手のプレー動画を積極的に送ってアピールしているという。「大学側から(映像が欲しいという)コンタクトもある。選手の希望をできる限りかなえてあげたい」と対応に奔走する。

 人生のターニングポイントとも言える進路決定。異例の事態だからこそ、関係者には柔軟な対応が求められそうだ。

(長嶺真輝)