「キングス 止まってない」 未来信じる力発信


「キングス 止まってない」 未来信じる力発信
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 新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、プロや実業団のスポーツリーグが開幕延期、中断を余儀なくされている。沖縄を拠点とする各球団も満足な練習すら難しい状況だ。そんな中、会員制交流サイト(SNS)を利用した動画配信でファンとの結び付きを得ようとしたり、ホームタウンの市町村に寄付をしたりするなど独自の取り組みで地域貢献を模索する動きもある。各チームの代表者にインタビューし、不自由を強いられる中での地域球団のあり方やスポーツの持つ力、チーム経営上の課題を聞く。1回目はプロバスケットボールBリーグ1部の琉球ゴールデンキングスを運営する沖縄バスケットボールの木村達郎社長にビデオ会議アプリ「zoom(ズーム)」で話を聞いた。

 ―選手の現状は。

 「練習は完全にストップしていて、選手は自宅で体を動かしているかもしれないが、極力外出しないようにしている。私たちが地域社会に感染を広めることになってはいけない」

 ―シーズンの途中終了が決まる直前の時期、選手はどんな状態だったか。

 「とても冷静だった。チャンピオンシップの時期にはプレーできることを信じ、最後まで優勝するつもりで毎日練習していた。動揺やおびえはなかった。ジャック・クーリーとか外国人選手も含め『優勝するぞ』と鼓舞し合い、前向きに練習に臨んでいた」

 ―昨季はヘッドコーチ(HC)の途中交代やけがによる選手の離脱など激動だったが、西地区3連覇を果たした。評価はどうか。

 「中心選手のジョシュ・スコットが抜けたことは精神的にすごくきつかった。みんなに慕われていた仲間だったので。あれだけの大けがをして、リハビリに付き合っていたスタッフは精神面が崩れそうだった。コーチの件も、コロナの件も本当にいろいろあり、全てが大変だった。それでも自分たちで崩れることはなく、ひたすら走り続けた。最終的にリーグは中止になったけど、最後までギブアップはしなかった」

「団結の力」プロジェクトで、中継テレビを通してファンに手を振る琉球ゴールデンキングスの選手たち=3月21日、沖縄市体育館

 ―実戦練習をSNSで公開したり、沖縄市にマスクの購入資金を寄付したりしている。地域貢献のあり方をどう考えるか。

 「ファンに戸惑いがある中で、明るさ、楽しさを届けたいと思い、キングスの選手同士が対戦する『団結の力』プロジェクトを企画した。SNSやテレビ、新聞を通し、ファンに『キングスは止まってないよ』ということを発信したかった。未来を信じる力、夢、希望という感情を沖縄の地域社会に生み出すことが自分たちの一番やるべきこと。それが自分たちの存在意義だ。『苦しい中でもあきらめないで戦い続ける』ということを、スポーツは分かりやすい形で伝えられる」

 ―リーグの中断で各球団とも集客収入がない状態だ。経営上の課題は。

 「キングスはリーグの中でも集客力のあるチームなので、お客さんを会場に入れられない状態は経営的にすごく厳しい。スポンサー企業も経済的なダメージがまだまだ続く中で、先が見えない状態だ。シーズン終了直後で、緊急事態宣言の最中なので、今は冷静に状況を把握することを優先したい。今すぐ何か具体的な対策を取るというよりも、地域社会に貢献できることをやり続ける姿勢が大切だと思う」

 ―“キングスロス”のファンにメッセージを。

 「今は不安やもどかしさがあり、我慢の時期だと思う。『キングスを見て元気になりたい』と思っていただいているのは、ファンからの声掛けやSNSでの書き込みで感じている。状況が変わった時に皆さんを元気づけ、楽しんでいただけるように準備をし続ける。直接会える時を楽しみにしています」 (聞き手 長嶺真輝)