「無補償なら持たない」 緊急事態延長で企業収益が激減


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 安倍晋三首相は新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の期間を全国一律で1カ月程度延長する方針を発表し、4日に正式決定するとした。観光客の激減や外出自粛、県からの休業要請など、収益が著しく落ち込む各業界からは「補償なしではこれ以上持たない」と悲鳴が上がっている。緊急事態宣言が延長されても、生活のために休業要請に従わない企業や店舗が出てくることも指摘されている。

<観光>基幹産業、深刻さ増大

 沖縄の基幹産業として県経済の好調さをリードしてきた観光業では、宿泊者や業務の激減で従業員の自宅待機やホテルの自主休業が長引くなど深刻さが日々増している。
 大型連休が明けて以降も感染拡大防止の状況は続くと判断し、5月末や6月まで1カ月にわたり臨時休館しているホテルが多い。緊急事態宣言の期限である6日までの休業としていたホテルの多くも、休業期間の延長を決めている。
 夏場が最盛期となる沖縄観光は、ホテルの年間売り上げの6割ほどを7~9月で稼ぎ出すとされる。県ホテル協会の平良朝敬会長は「状況が長引けば気力も体力も持たなくなり、倒産する企業も出てくるだろう」と厳しい見通しを示した。
 那覇市の老舗、ホテルサンパレス球陽館は6日までだった臨時休館を、20日までに延長した。金城仁社長は「夏場が頼みの綱だ。早く終息してもらわないと困る」と先行きを不安視する。休業中の従業員の雇用を維持するため雇用調整助成金の手続きを進めているが、申請の煩雑さに手こずって進展は思わしくない。「本当に(助成金を)もらえるのか」と不安を募らせている。

<飲食>休業補償を強く要望

 那覇市内のバーは4月下旬から休業しているが、休業中も家賃は発生している。緊急事態宣言の延長に、経営者は「もうこれ以上持たない。一日も早く営業したい。5月末まで(休業)なんて無理だ」と悲痛な声を上げる。
 バーやスナックが加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長は、業界の多くは7日から店を再開できるという期待感が強かったとして、「2週間程度ならば我慢できても、あと1カ月延長となれば生活のために店を開ける人も出てくるかもしれない」と指摘する。「協力金を増額しないまま延長すれば、従業員の解雇や廃業も確実に出てくるだろう」と懸念を抱き、休業要請とセットで営業補償を求めた。

<レジャー>収入途絶え先見えず

 他の都道府県では営業継続を巡って行政との衝突が見られるパチンコ店だが、県内では4月24日以降全店が休業している。
 県遊技業協同組合は1日に緊急理事会を開き、休業要請が延長された場合も前向きに取り組むことを確認した。ただ、各店で家賃などの負担が重く、業界内では完全に足並みがそろうのか不安視する声もある。山田聡専務理事は「補償とセットではない休業要請という枠組みによって、現場は混乱している」と嘆いた。
 4月9日から一時休館する沖縄市のカフェ映画館シアタードーナツ・オキナワは、休業が3週間を超えた。5月も書き入れ時の大型連休に営業できず、緊急事態宣言の延長でさらに収入が途絶える期間が長くなる。宮島真一代表は「収益を得る方法を工夫しないといけない。どの支援制度が自社の規模に適切かを見極めている」と話した。

<農林水産>消費鈍り輸送不安も

 農林水産業は海外でも人気が高い和牛やクロマグロの相場が下落し、土産品として需要の高い黒糖や海ブドウの消費も減っている。
 学校休校の延長で、給食用の牛乳が余る事態も予想される。3月に臨時休校となった際には、春休みまでの期間に約520トンの余剰が出た。航空各社の大幅な減便で物流が停滞し、漁最盛期のクロマグロや車エビなどの県外輸送も滞っている。
 緊急事態宣言が延長され、大型連休明けに出荷ピークとなるパイナップルや、夏場の贈答需要が大きいマンゴーの輸送手段確保にも影響が出ないか懸念がある。JAおきなわの担当者は「輸送ができても緊急事態宣言で消費が鈍っている」と先行きを不安視する。