汚染後の安全確認で県立ち入り 事故現場付近の土壌採取認めず


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格納庫そばの土壌採取の作業を確認する日米の関係者=1日、普天間飛行場(在沖米海兵隊ツイッターより)

 米軍普天間飛行場から大量の泡消火剤が流出した事故で、県、宜野湾市、沖縄防衛局などは1日、日米地位協定の環境補足協定に基づき同飛行場への立ち入り調査を実施した。米軍自身が事故で汚染された可能性があると説明し、4月24日に土壌を撤去した広さ約65平方メートル、深さ約15センチの範囲について、撤去後の安全性を確かめるためとして県が求めていた残土の採取が認められた。一方、事故が起きた格納庫の反対側や、泡消火剤が基地外に流出した経路となった排水路のそばなど、県が求める他の地点での採取は今回も認められなかった。

 米軍が日本側にサンプル採取を認めたのは、米軍が先月24日に土壌を撤去した範囲内にある5地点。採取した土は県、政府、米軍が1地点当たり500グラムずつ持ち帰った。県はおよそ1カ月半の後、政府は今月内には分析結果が出る見込み。

 汚染事故を受けた環境補足協定に基づく米軍基地への立ち入りは今回の事故が初めてで、立ち入りは4度目。土壌の採取は初めて。県の仲地健次環境保全課長は立ち入り後、「サンプリング調査ができたのは環境補足協定の一つの成果だとは考えている。ただ、もう少し確認したい点もある」とし、引き続き県が求めた地点での土壌調査を認めるよう要求した。宜野湾市も同様の追加調査を求めた。

 県によると、米軍が汚染土を撤去した部分はコンクリートで覆う予定。今回、県が土を採取した部分に汚染が残っていた場合に求める対応について、県は専門家の意見を踏まえた上で検討するとしている。

 一方、先月24日に米軍が撤去した汚染土について、県は分析のために米側に提供を求めているが、1日時点で実現していない。土は米軍が保管している。

◆補足協定の限界露呈

 米軍普天間飛行場から有機フッ素化合物PFOSなどを含む泡消火剤が流出した問題で、日本政府と県、宜野湾市は1日、発生場所の格納庫そばで土壌を採取した。県の要求の一部が実現し一歩前進したが、米軍が4月24日に掘削し回収してあった土壌のサンプルは入手できなかった。立ち入りの根拠となる日米地位協定の環境補足協定は、米軍側に落ち度のある環境事故であっても日本側がサンプル採取を強制できる立て付けになっていない。初の適用事例で運用上の限界を露呈した格好だ。

 日本政府と県、市の職員は4月24日、米軍が泡消火剤の流れ込んだ格納庫そばの汚染土壌約65平方メートルを掘削するのに立ち会ったが、この時は土壌採取を米側に拒否された。5月1日の立ち入りで採取できたのは汚染部分が取り除かれた後の土壌の表面部分で、4月24日に米軍が回収した土壌のサンプル採取は認められなかった。

 日本側は格納庫そばのほかにも、泡消火剤が流出した排水路付近の芝生など3カ所でのサンプル採取を米側に求めている。発生から3週間が経過したが、これも実現しておらず、防衛省の担当者は繰り返し「米側と調整中」と説明する。

 環境補足協定に関する日米合意では、米軍によるサンプル採取と「併せて」、日本側も採取を申請できると規定している。採取に関して米側に与えられた裁量は大きく、この日の立ち入りでも、サンプルとなる土を取り出す作業は米軍関係者が担い、それを見守っていた日本側の職員に容器に入れられて手渡された。