[日曜の風]政府の無駄遣い 生活や命こそ優先を


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 先週末にアベノマスクが2枚届いた。ちっちゃいとは聞いていたが、想像以上にちっちゃい。よほどちっちゃい顔の人でないと無理だな。1月にコロナ問題が勃発(ぼっぱつ)して3カ月以上たって、やっと届いた政府支援が使えないマスク2枚だけって冗談のような話だが、不良品が多くて現在は回収やら配布中止で、マスク2枚すらまともに配れなかったという悪夢のような話に変わった。466億円の無駄遣いを誰も止められなかったって、悲しすぎるよね。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に停泊していた1月末から2月にかけて、病院船を厚労省が保有したらどうかという話が出て、超党派で政府に病院船整備を求める法案提出の動きが報じられていたけれど、あれは一体どうなったんだ?

 ちなみに米海軍の病院船「マーシー」は7万トン弱(5万トンの飛鳥IIよりでかい!)は、ベッド数千床で手術室が12、放射線治療室、薬剤室、歯科室などを備えているという。そこまでの規模ではなくても、阪神淡路大震災の時にも、東日本大震災の時にも議論されていたのにいつも消えるのは新規建造費が最大350億円で高すぎるという理由だった。

 350億円を高いと却下しておいて、マスク466億円は高くないと思ったんですかね。病院船があれば、今回のような疫病の流行で医療崩壊が起こっても、大地震や津波などで交通が寸断され、病院倒壊や電源喪失で使用不能の時にも、通信設備が完備して連絡手段が確保でき、海から現場に駆け付けられ、避難所としても機能できて安心につながる。中古なら30億円で改造することもできるとか。

 私は悲しいかな億単位のお金にリアリティーが持てない。兆になるとぼーっとしてしまう。が、間にマスクと病院船を挟むとリアリティーが生まれる。

 軟弱地盤でほぼ不可能なのに9300億円をかけるという辺野古の工事。いや実は2・5兆円かかるという試算もある。リアルに腹がたつ。明らかに無駄かつ不要不急だから速やかに凍結して、もっと休業補償や医療への支援に回せば日本中の人々の生活や命が救われる。これで、今までは沖縄の問題だった辺野古が、やっと日本の問題になるかも。動機がいささか情けないけど…。

(吉永みち子、作家)