休校長期化で子の虐待増も 手紙や電話も使い教師は対話を


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 新型コロナウイルスの対策で小中高や大学の休校が長期化し、虐待や貧困などハイリスク家庭の子どもの心身への悪影響が懸念されている。子どもが抱える諸課題の解決を担う専門家スクールソーシャルワーカー(SSW)の相談役であり、沖縄大学教授の名城健二氏(精神保健)は「表面化していないだけで、問題はすでに起きているはずだ」と危機感を抱く。SSWも活動が制限される中、「今こそ原点に返る時だ」と丁寧な対話が必要だと訴えた。

休校中のファミリーバイオレンス発生に警鐘を鳴らす名城健二教授=那覇市の沖縄大学

 名城教授によると、沖縄の場合、親から子への直接的な暴力や面前DVなど「ファミリーバイオレンス」のリスクは県外に比べてもともと高い。さらに休業要請による収入減で親のストレスはかつてないほど高まっているとみる。「リスクがあった家庭は言うまでもなく、これまで問題がなかった家庭でもファミリーバイオレンスの危険性が出ている」と危惧した。

 子どもの変化をいち早く察知するため、県内SSWの中には弁当配布や地域の見回りなどを行っている人もいるが、活動が制限されることもある。名城氏は「普段は授業で忙しい学校の先生とじっくり情報交換し、再開したらどう実行するかプランニングもできる。今だからこそできることもある」と、再開に向けた準備も推奨する。

 SSWが持つハイリスク家庭の情報を基に、電話やLINE(ライン)で連絡を取ることも有効と提案する。「手紙を書くこともいいかもしれない。課題のある子と接点のあるSSWはその子を重点的に、教師は全体に目を向けるといった役割分担もできる」とした。

 「訪ねていって話を聞くアウトリーチはソーシャルワークの基本。新しい取り組みもいいが、手紙、電話、ネットなどハイテクとローテクを駆使し、原点の活動に立ち返るのがいいのかもしれない」と説く。

 名城教授は大学で学生の相談を受けるキャンパスソーシャルワーカーも担う。大学生の精神状況も深刻さが増していると指摘した。「1人でいる時間が長くなることにより、自殺願望が増している学生がいる。特に大学1年生は新生活で誰も知り合いがいない人もいる。すぐにでもメンタルケアを始めたい」
 (稲福政俊)