戦後75年なのに…6・23慰霊祭縮小、遺族ら「苦渋の決断」


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 新型コロナウイルスは、沖縄戦の戦没者を追悼し、恒久平和を願う「慰霊の日」も直撃した。今年は戦後75年の大きな節目となるが、県内各地の主な慰霊祭は中止や規模縮小に追い込まれ、影響は沖縄戦の継承や平和教育にも及ぶ。「中止も苦渋の決断」「高齢者が多くやむを得ない」。関係者は苦しい胸の内を明かす。

慰霊祭で涙を流しながら校歌や別れの曲を歌う元ひめゆり学徒たち=2019年6月23日、糸満市伊原のひめゆりの塔

 「全国から多くの人が集まる。苦渋の決断をせざるを得ない」。平和祈願慰霊大行進を主催する県遺族連合会の宮城篤正会長は中止を決めた理由をこう明かした。行進は糸満市役所を出発し、平和祈念公園までを歩く。祈念公園に着いた参加者は沖縄全戦没者追悼式に参列する一大行事で昨年は650人が参加した。昨年まで58回開催しており、今回初めて中止となる。

 激戦地となった糸満市内では各学徒隊の慰霊塔などで慰霊祭が予定されている。沖縄師範健児之塔は合同慰霊祭が一度途絶え、2009年に復活した。慰霊祭を復活させた遺族の1人、仲田英安さんは「慰霊塔は狭く3密になってしまう。高齢者も多いので仕方ない」と語る。今年は式典は行わず、自由参拝の形にするという。

 沖縄戦の継承、平和教育への影響も懸念される。ひめゆり平和祈念資料館の休館が続く中、ひめゆりの塔は規模を縮小する方針だ。同資料館職員は「例年通りの式はできない」と頭を抱える。

 一中健児之塔は県立首里高校と養秀同窓会、二中健児の塔は県立那覇高校と城岳同窓会から例年多数が集まる。生徒たちにとっては同じ年頃の学徒が動員された事実を知る機会だが、今年はいずれも参加人数を減らす予定。城岳同窓会事務局は「生徒たちも半分くらいにしてもらうしかない」と残念がった。