5月10日は「黒糖の日」 島ごとに個性「台湾女性に人気」ブランド育成へ


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県産黒糖を紹介する県黒砂糖工業会の宇良勇次長=4月28日、那覇市古波蔵の県黒砂糖工業会事務所

 沖縄の基幹作物であるサトウキビ。離島を中心に栽培され、島経済を支える重要な産業だ。サトウキビの搾り汁を煮詰めて固めた黒糖は、昔からお茶請けとして家庭に常備され、県民にとってなじみ深い。近年、安い海外産との競合などで国内販売量が落ち込み、黒糖は在庫過多に悩まされている。

 かつて県内には数百の黒糖工場があった。しかし白砂糖(精製糖)の需要が高まったことから、黒糖工場を白砂糖の製糖工場に変える政策転換が行われた。1970年代から黒糖工場が減少し、現在、黒糖工場があるのは伊平屋、伊江、粟国、多良間、小浜、西表、波照間、与那国の八つの離島だけになっている。

 8島で作られる黒糖は、島の土壌や天候によって味や食感が異なる。県黒砂糖工業会の宇良勇次長は「サトウキビの特性がそのまま味に出てくる。ミネラルが豊富で体にいい黒糖は、甘いだけでなく、ほろ苦さもある」と話す。
 サトウキビの全成分を濃縮した純黒糖は、ビタミンやミネラルの栄養素が豊富に含まれ、血圧を下げる作用があるカリウムは白砂糖に比べて550倍多く含まれる。健康志向の女性や海外の消費者の間で純黒糖の評価が高まっている。

 特に台湾で沖縄産黒糖の人気が高いという。「台湾の女性は沖縄の人以上に黒糖が大好きだ。黒糖とショウガをお茶に溶かしてボトルで持ち歩く女性が多い」(宇良次長)

 ただ、販路全体からすると海外向けの取り扱いはまだまだ小さい。県産黒糖の生産量は2019年まで3年連続で9千トン台だったのに対し、沖縄県内を含めた国内での販売量は年7千~7500トンにとどまる。過剰生産の状態にあり、サトウキビが豊作でも喜べない状況が続いている。

 国内の販売が低迷する背景には、外国産の安価な輸入黒糖や、黒糖に粗糖や糖蜜を混ぜた加工黒糖にシェアを奪われていることがある。わずかでも県産黒糖が含まれていれば「沖縄県産」とうたうことができるため、関係団体は差別化に頭を悩ませる。サトウキビ100%の県産純黒糖のブランド印「沖縄黒糖」を目安に商品を選ぶよう呼び掛けている。

 そこに追い打ちを掛けるように新型コロナウイルス感染症が発生し、観光客の土産需要が消失してしまった。新型コロナの感染拡大を受けた観光客の減少と土産品店の休業などで、注文が激減している。前年と比べた売り上げは県黒砂糖協同組合が3割減、各黒糖工場で4割減となった。

 5月10日は、語呂合わせで「黒糖の日」だ。新型コロナの影響で販売促進のイベントは催せないが、関係団体は県産黒糖の消費拡大を呼び掛ける。

 黒糖は調味料として幅広く活用できるほか、スイーツとの相性もいい。県黒砂糖工業会は黒糖のレシピをホームページ(https://www.okinawa-kurozatou.or.jp/)で掲載している。

 同会の宇良次長は「島によって黒糖の味や食感が違う。それぞれの島の特徴を感じてほしい」と話した。

(石井恵理菜)