prime

変化する政府と地方 沖縄から秋田の調査を<佐藤優のウチナー評論>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 4日、安倍晋三首相は会見を行い、当初、6日までとしていた全国を対象とする緊急事態宣言を31日まで延長すると述べた。これを受けて、玉城デニー知事は5日、県独自の緊急事態宣言を31日まで延長すると発表した。ただし、事業者への休業要請は20日までとする。

 〈県幹部の中には、休業要請をもっと早期に解除することを容認する意見もあった。だが、玉城知事は経済への深刻な打撃に懸念を示しつつも、「潜伏期間を疫学的に考えると、2週間は絶対に必要だと思った」と強調した。/ただ、県の緊急事態措置の延長で、新たな経済対策について具体的な対策は示されなかった。/県は4月から休業要請に応じている事業者に20万円の「協力金」を支給するが、今回の2週間の休業延長分について協力金の上乗せはない。県幹部は「上乗せをやっているのは財源がある東京都くらいで、他の自治体では難しい。県がこれまで示した県独自の支援策を一日でも早く進めることに全力を尽くしている」と理解を求めた〉(6日本紙電子版)。

 県は「活動再開へのロードマップ」を策定しているとのことであるが、その際に重要なのは、短期的対策と中長期的対策を区分することだ。短期的には、休業要請によって、収入が激減した人々に対して健康で、文化的な生活ができるための収入を得るための対策が必要になる。

 ただし、今回の新型コロナウイルス禍以後、地球規模で経済構造が変化する。新しい状況に適応し、沖縄が生き残り、発展するためのロードマップの策定も重要になる。これは今後の状況の変化を見ながら組み立てていくことになろう。

 いずれにせよ、中長期的に経済を発展させる基礎になるのが人材だ。

 新型コロナウイルス禍以後の沖縄発展のために県として教育環境の整備と、沖縄の学校で学ぶ児童、生徒、学生を支援する制度を整えてほしい。

 新型コロナ禍により、国の安全保障政策にも変化が出ている。秋田県におけるイージス・アショアの配備計画で、政府が想定外の譲歩をした。〈政府は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、現行案の陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を断念し、新たな候補地として秋田県内の国有地を軸に選定する調整に入った。政府関係者が6日、明らかにした。現行案に対する地元の強い反対を踏まえた判断。候補の国有地は、新屋演習場を選んだ過程で浮上した同県内9カ所を想定する。ただ地元の同意を得られるかどうかは不透明だ〉(6日本紙電子版)。

 政府は、新屋演習場が技術的に最適であると主張していたが、説明資料に多数の間違いがあり、説明会で防衛省職員が居眠りをするなど不誠実な対応をとったことにより反発が強まった。

 〈秋田県の佐竹敬久知事が今年1月、河野太郎防衛相との会談で「新屋は住宅密集地に近く、県として理解する状況には至らない」と撤回を要請。自民党秋田県連の金田勝年会長も2月と4月、河野氏に「新屋配備は無理がある」と伝えた。政府内でも「地元の了解がないと難しい」との見方が広がり、防衛省も「地元の首長が反対している状況で新屋への配備は難しい」(幹部)と判断した〉(6日「毎日新聞」電子版)。

 政府は、新屋を除く秋田県内9カ所の国有林などから候補地を絞り込む検討を進める意向だが、地元の反発が強い場合、計画を断念せざるを得なくなる可能性がある。

 秋田県と中央政府の力関係で、秋田県が優位に立つようになった。この状況がなぜ起きたかについて、県から職員を派遣し、調査してほしい。辺野古新基地建設阻止につながるヒントが見つかるかもしれない。

(作家・元外務省主任分析官)