宮古・八重山の景勝地 「廃業」危機でも出口探る 観光地はいま〈4〉


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 新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛は、観光業が主要産業の宮古島や石垣島など先島地域の経済に深刻な打撃を与えている。

 行政は観光客の来島中止を訴え、景勝地や観光施設を閉鎖した。東洋一の美しさともいわれ、例年なら県内外からの観光客でごった返す海からも人の姿が消えた。夏場に匹敵するほどの書き入れ時に自主休業せざるを得ない観光業者らは廃業の危機にさらされている。

 宮古島観光協会の根間春仁事務局長は「これまでにない深刻な状況だ」と語る。連休期間中は例年、空路で約1万5千人が来島するが、現在県外と宮古を結ぶ路線は運休中。今年の旅客数は約1200人と1割にも満たない。同協会が把握するだけでも宿泊やマリンなど観光関連の約170業者が臨時休業した。「飲食店などを加えるともっと増える。企業が存続ができるかどうかまで追い込まれてきている」と危機感をあらわにする。

 宮古島市によると、寄港予定だった海外クルーズ船は1月から寄港中止が出始め、4、5月は全て中止に。市は3月時点での経済損失を約21億円と試算した。

 観光協会は3月、コロナの終息後を見据えて「宮古島観光リカバリープロジェクト委員会」を設置した。終息後の観光プロモーションにつなげようと来島者アンケートを実施しているところだ。しかし緊急事態宣言後は会合を開けていない。根間事務局長は「出口が見えず苦しい状況だ」と肩を落とす。

 石垣島でも民間の観光施設が行政に先立ち、臨時休業に踏み切った。4月10日から休業した「石垣やいま村」は名蔵湾を一望する丘にあり、手のひらサイズのリスザルと触れ合えることでも有名な観光名所だ。

 休業以降、多くの客と触れ合っていたリスザルたちが触れ合うのは飼育員だけだ。約40年前からやいま村に関わる前社長(現顧問)の兼島英樹さん(69)は「これまでで一番厳しい状況だ」と静かに話す。

 施設管理する職員が草の手入れをするなど、いつでも開園できる準備を整えるが、「終息したからといってすぐにお客さんが戻るかは分からない。みんなで知恵を絞って頑張らないといけない」と強調した。 (佐野真慈、大嶺雅俊)
 (おわり)

外出自粛により、人の姿がなくなった宮古島の観光名所の一つ与那覇前浜ビーチ=4月25日、宮古島市