宜野湾市の広範囲で有害物質 普天間消火剤流出 米軍、原因明らかにせず


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 【宜野湾】有害性が指摘されている有機フッ素化合物PFOSやPFOAなどを含む泡消火剤が米軍普天間飛行場から宜野湾市の河川などに流出してから10日で1カ月がたった。米軍は原因を明らかにせず、事故の全容は不明のままだ。県や市、琉球新報・京都大学などによる水質調査の結果からは基地外で広範囲の汚染が確認された。

 事故は4月10日午後4時45分ごろに発生した。格納庫で消火システムが作動し、泡消火剤が約22万7100リットル漏出。うち約14万3830リットルが基地外へ流れた。泡消火剤は下水処理されることなく暗渠(あんきょ)を通り、宇地泊川(比屋良川)へ。同日夜から翌11日にかけて宇地泊川(比屋良川)に泡が滞留し、住宅街や県道に泡が飛散した。

 米軍は流出した泡消火剤を回収せず放置し、基地内の泡消火剤の流出防止を優先した。国や県、市は日米地位協定の環境補足協定に基づく立ち入りを初めて要請し、水や土壌を採取する調査が続く。一方、米軍は国などの採取前に基地内の現場で放水し土壌をはぎ取った。このため環境汚染の実態が把握しにくくなり、課題が残った。

 琉球新報が4月12日に採取した宇地泊川の水を京大の原田浩二准教授が調査し、1リットル当たり247・2ナノグラムの高濃度PFOSとPFOAが検出された。日本環境化学会の田代豊評議員が沿岸で取った海水からは同255・4ナノグラムの値が出た。米国の暫定指標値(同40ナノグラム)と日本の暫定指針値案(同50ナノグラム)を5~6倍も上回った。

 PFOSやPFOAは水に溶けやすい性質を持ち、人体の血液や肝臓にたまりやすいとされる。発がん性や血中コレステロール上昇などのリスクが指摘され、国際的に使用や製造が制限・原則禁止されている。米軍は飛行場内でPFOSなどを含んだ泡消火剤を使用し、基地周辺の湧き水では高濃度のPFOSなどが検出されている。