「医療崩壊を防ぐことが重要」 台湾のコロナ対策、范振國さんに聞く


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沖縄にマスクの公平配給制度が必要と提言する台北駐日経済文化代表処那覇分処長の范振國さん=那覇市

 新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾は、4月から20日以上、域内の新規感染者数をゼロに抑えている。経済活動が制限されたことは一度もなく、店舗などは通常通り営業する。台湾政府と民間団体が寄付する医療物資も近く沖縄に届くという。台湾の予防対策や沖縄への提言などを、台北駐日経済文化代表処那覇分処長の范振國さんに聞いた。

 ―早い段階で予防対策を取った背景は。
 「台湾は2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)を経験し、世界的に流行する病気に相当警戒してきた。2019年末、中国の武漢から原因不明の肺炎が発生しているとの情報が入ったことから、当局が今年の1月20日に中央感染症指揮センターを立ち上げた」

 ―政府主導でマスクを全国民に配給している。
 「台湾も日本と同様で、これまで中国製の医療物資に頼ってきた。しかし中国国内のコロナ感染拡大でマスクなどが不足し、海外輸出が制限された。そのため、台湾の当局は2月初旬にマスク国家チームを設置し、国内生産に力を入れた。通常、マスクの生産ラインは設置に1年間かかると言われているが、台湾ではわずか40日間で92のラインを構築した。現在、1日に生産できるマスクの枚数は1500万枚に上る」
 「マスクの価格高騰を防ぐため、当局が製造会社からマスクを一括で買い取る。全国民に公平に配給できるよう、IT大臣の唐鳳氏らが最新技術を駆使し、国民保険証があれば、誰でも薬局やスーパーでマスクを買えるシステムを構築した」

 ―感染者や濃厚接触者も徹底的に管理した。
 「感染拡大を封じ込めるため、台湾が独自に開発したデジタル感染追跡システムがある。当局が感染者や感染疑いの患者などに専用の携帯を渡し、自宅隔離をしているかどうか確認する。米国をはじめ、イギリスやオーストラリアなど10カ国から同システムの導入について打診が来ている」

 ―沖縄への提言は。
 「現在、沖縄にとって最も重要なのは医療崩壊を防ぐことだ。医療施設に優先的に医療物資を届けるため、県庁がマスクなどを一括で買い取り、配給すべきだと考えている。これまで県内の医療機関から数件の相談があり、台湾からの援助を打診している。実際に台湾政府と民間団体が近いうちにマスクやフェースシールドを沖縄へ郵送する予定だ」(聞き手 呉俐君)