「とことん鍛える時期」 レスリング・屋比久翔平 自宅トレ「今できること」徹底【Reスタート・2】


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昨年の全日本選手権決勝。相手に圧力をかけ続ける屋比久翔平=2019年12月、東京都の駒沢体育館

 レスリング男子グレコローマンスタイル77キロ級の屋比久翔平(浦添工高―日体大、日体大大学院出、ALSOK)は今、練習拠点とする母校の日体大が入構禁止となり、マットから遠ざかっている。相手と常に接触する競技だけに、実戦練習自体が難しい。突如訪れた空白の期間。近所の神社にある階段を上ったり、ダンベルやチューブを使った自宅トレーニングをしたりして「今できること」に汗を流す。「とことん鍛える時期にしたい」と前向きさを忘れてはいない。

 昨年12月の全日本選手権で優勝し、3月下旬に中国・西安で予定されていたアジア予選への出場権を得ていた。2月中旬に会場がキルギス・ビシケクに変更され、さらにその1週間後、大会自体が中止となり事態が混迷。代表選考が進まない中、当時は「大会をやるかはっきりせず、体重をキープし続けないといけなかったから、ストレスもたまった」と心身ともに苦しい状況にあった。

 五輪延期の一報にはただただ驚いたという。大一番に向けて気持ちを張っていただけに「本当は今年やりたかった」と本音を明かす。「この1年はかなりきつい練習をしてきたから、『もう1年やるのか』とも思った」と気持ちに落差も感じた。しかし、五輪でメダルを取るという最終目標は揺るがない。「すぐに気持ちは切り替えられた。今はもっと強くなれる期間がもらえたと思っている」。声色は淡々としていて、力強い。

 現在25歳。選手として依然脂の乗った時期で「もっともっと強くなれる」と伸びしろを感じてもいる。父で北部農林監督の保さん(57)も「年齢的にもモチベーション次第でもっと体力を付け、経験を積める」とみる。自身が果たせなかった五輪出場の夢に挑み続ける息子。今は毎日のように連絡し「感染が落ち着くまで極力外には出るなよ」「なるべく体力は落とさないように」と体調管理に気を配っている。

 パワーのある海外勢に対抗するため、この1年で筋力や体幹の強化を目指す。特に重点を置くのは上半身の鍛錬だ。強敵になればなるほど高い防御力で組んでくるため「スタンドで押して、クラッチでしっかりつかみ、投げるまでの流れを強化したい。1ランク、2ランク成長する」とより屈強さを増した自身を思い描く。練習が制限された今、そしてマットに戻った時、やるべき事は常に明確だ。
 (長嶺真輝)