【記者解説】沖縄3銀行減益 コロナ禍の中小支援と健全経営が課題に


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 地銀3行の2020年3月期決算はいずれも減益となったものの、貸出金、預金ともに増加を続けるなど、好調な県経済が下支えして比較的安定した状況が続いている。だが、年度終盤に起きた新型コロナウイルスの感染拡大は県経済の幅広い層に影響を広げており、金融機関の経営環境を一変させる可能性がある。

 貸倒引当金の積み増しなど与信コストが膨らむとの予測などがあり、21年3月期の業績は3行ともに減収減益と見込んでいる。

 16年1月に始まった日本銀行のマイナス金利政策で、金融業界は利ざやの縮小に苦しんでいる。それでも県内では、景気の拡大で設備投資の需要が高く、3行ともに貸出金のボリューム拡大で金利の低下を補っている。融資先企業の業績改善で与信コストを低く抑えられてきたことも、収益の確保に寄与してきた。

 だが、新型コロナの拡大で県内地銀などの実質預金の増加率は鈍化し、個人、法人ともに預金を切り崩す動きも表面化している。

 感染防止対策で企業の売り上げ激減する中で、各行ともに事業者の相談窓口を設置するなどして、資金繰り支援を進めている。

 事業者支援の考え方に特色もみられる。琉球銀行は取引企業の貸出条件の変更に積極的に対応するとして、貸倒引当金の大幅増を見込んでいる。沖縄銀行は自己資本の厚さで与信費用を吸収することは可能と見込み、資金繰り支援を進める考え。顧客に中小・小規模事業者が多い沖縄海邦銀行は、きめ細やかな対応で支援に注力する。

 ただ、感染症の影響が長期化すれば、企業の業績悪化で信用リスクが高まることにつながる。感染症関係の低金利融資の申し込みが増えた場合、各行の貸出金利回り自体を圧迫することも想定される。

 地銀として最も大きな役割とも言える中小企業の資金繰り支援で県経済の悪化を防ぎつつ、銀行自体の健全経営をいかに保つかという難しいかじ取りを迫られている。
 (池田哲平)