「答えがなくても希望を」浦添のコロナ出口戦略 家庭の負担減へ、県との足並み課題


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【浦添】浦添市は9日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う公共施設の利用自粛などの段階的な緩和に向けて独自の出口戦略を打ち出した。慎重論もある中、緩和に向けて決断を下した松本哲治市長は「『答え』は示せないが、未来に向けた『希望』を示したかった」と強調する。

 関係者によると、市独自の出口戦略の背景には市長の強い意向があったとされる。松本市長は「休校が続き、子どもや家庭にかなりのストレスがかかっていた。そこを何とかしたかった」という。

 小学3年の息子がいる市内の女性は、在宅で仕事をしながら子どもの面倒を見てきた。「外に出られず、ずっと子どもといることでいらいらもあった」という。市の出口戦略について「いつまでか分からないまま我慢するよりも、進み具合が理解しやすいのでいいと思う」と歓迎した。

 ■第2段階

 浦添市の出口戦略は4段階。(1)浦添地区PCR検査センターの検査結果(2)医療体制の確保(3)市内の経路不明新規感染者数(4)経路不明新規感染者の地域、状況などの分析(5)近隣自治体での新規感染者発生状況(6)県内の実効再生産数(7)県専門家会議作成の活動再開ロードマップが示す目安―の7項目を毎週検討する。特に具体的な数値の目安は示さず、総合的に判断するとしている。週に1度会議を開き、翌週から次の段階に進むのか、再自粛を要請するのかを検討する。

 市内で4月20日以降、感染者が出ていないことなどから、市は18日に「第2段階」に入ることを決めた。台風接近の影響で19日からにはなるが、小中学校が分散登校で再開される。

 ■市民のみ

 出口戦略では、11日から飲食店の営業を夜10時までと緩和したが「原則市民のみ」の利用とし、市民にも市外の店の利用自粛を求めた。これに強制力はない。

 市内で飲食店を営む男性は自粛の緩和を喜びつつも「原則市民のみ」の制限について「お客さんにいちいち『浦添市民ですか』と尋ねることはできないし、するつもりもない」と話す。

 県立中部病院の高山義浩医師は「県内でも市町村によって事情が違うので、県の動きを待っているだけでなく、それぞれが住民目線で独自に方針を決めていくことは重要だ」と評価する。ただ「浦添市だけでは決められない事項もあり、県全体で検討する必要がある」ことが課題だという。

 高山医師は「県民の移動については周辺の市町村と足並みをそろえる必要があり、本来は県で考えるべきことだ」と指摘する。再自粛の判断についても「各市町村でばらつきがあると、実効性がなくなる。県のリーダーシップに期待したい」と求めた。県は21日から県民に対する活動自粛を解除する。松本市長も「県の動きを参考にする」としている。

 18日から「第2段階」に入る浦添市。独自の出口戦略が奏功するか注目される。
 (荒井良平)

「うらそえリハビリ計画」について語る浦添市の松本哲治市長(左)=9日、浦添市役所