どんな出題でも対応する力を 英語は速い正確読みと聞く力<言わせて大学入試改革>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
木村 達哉

 僕は沖縄が大好きだ。毎月沖縄に戻ってゆっくりしていたのが不可能になって、日々ウイルスを呪っている。沖縄の皆さんには気をつけて過ごしていただきたい。

 

 さて、休校期間中の生徒たち、特に来年度から導入される共通テストの対応をどうしていいのかわからない高校3年の生徒のために、僕が灘校で指摘している点について書こうと思う。実質的に入試改革は完全に頓挫した(英語外部試験導入も共通テストにおける記述問題導入も見送られた)ので、今までどおりの勉強スタイルでまったく問題はない。ただし、注意すべき点は3点ある。

 

 一つ目は言うまでもないが、過去問がないということ。業者が作っている試行テストに基づいた問題集しかない。それもこの試行テストとは似ても似つかない問題が出題された場合(過去にはそういうこともあった)、その問題集をやればやるほど点数が取れないということになる。対策というほどの対策ができないので、しっかりと知識を頭に刷り込み、さまざまな種類の問題にあたり、どのような出題傾向の問題であっても対応できる真の力をつけておくことである。

 

 二つ目は英語のリーディングがかなりタフになるということ。これも試行テストに基づいた話になるが、センター試験と違って80分でリーディングが7題(大問は6題だが、最後の大問には長文が二つある)あるということである。今までは語法や整序などの雑問も含めて6題だったのが、長文読解ばかり7題が出題されるので、1題あたり11分か12分しか割けない。したがって、けっこうな速読力が必要であるということである。

 

 そして三つ目はリスニングの分量が多くなるということであろう。リーディングとの点数比(R100点対L100点)については各大学に傾斜配点が任されているので、結果的にセンター試験とまったく違いはなくなった。しかし、30分で大問が6題と増える。そして大問5Bと大問6Bのスクリプト語数がかなり多く、したがってセンター試験で最長であった大問4B(約200語から成るスクリプト)よりも長い時間、英語を聞いていなければならないのである。さらに言えば、短いスクリプトについては2回放送されるが、後半の長いスクリプトの問題は1回しか放送されない。

 

 以上のことから、リーディングでは速く正確に読む力が、リスニングでは長い時間集中して英語を聞く力が求められるということになるので、勉強スタイルは変わらないにしても、過去問を何度かやっているうちになんとかなるだろうといった姿勢では「最後まで解き終わらなかった」とか「放送の途中でまったく何を言っているのかわからなくなった」ということになるだろう。心して英語の勉強に励んでほしい。

 (灘高校・中学校英語科教諭)

 (毎月第4週掲載)   

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 新大学入学共通テストが2021年1月に実施されるにあたり、2人の執筆者に交互に月1回、その背景や思いを執筆してもらう。次回は6月26日付で、東京大学元副学長の南風原朝和先生が執筆する。