米軍西普天間跡地、引き渡し後も不発弾探査 識者「政治日程ありき」


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西普天間住宅地区跡地で見つかった不発弾処理に当たる陸上自衛隊=15日午前9時すぎ、宜野湾市

 宜野湾市の米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区跡地で15日、不発弾処理作業があった。2014年度末に返還された約51ヘクタールの西普天間は、沖縄防衛局が不発弾などを取り除く「支障除去」を完了したとして、17年度末に地権者へ土地を引き渡した。一方で防衛局は、市と交わした「確認書」に基づき現在も探査を続けており、新たな不発弾が見つかっている。識者は「引き渡しという政治的な成果を重視したことで、跡地利用の政策にゆがみが出ている」と指摘する。

 西普天間は跡地利用推進特別措置法(跡地法)に基づく「拠点返還地」に指定され、琉球大学医学部や同大学病院の移転が予定される。跡地法では、返還された米軍施設の引き渡し前に、国が支障除去を行うと規定する。調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表が、防衛局へ情報公開請求した「西普天間住宅地区の土地の引き渡し後の取り扱いに関する確認書」では、文化財などがある地点は支障除去の終了後も、防衛局が不発弾探査を続けることを明記した。

■「確認書」は非公表

 確認書は防衛局と市が引き渡し直前の18年3月28日に結んだが、存在などは公表されなかった。河村代表は「支障除去が終わっていない事実を関係者以外に伏せて、国と市で確認書を交わした」と批判した。防衛局は17年12月の米軍北部訓練場の引き渡し後、米軍由来の汚染除去を同局が担うことを盛り込んだ同様の文書を、林野庁沖縄森林管理署と締結していた。

 西普天間全域で地中を深く掘る探査で湧き水などの文化財が破壊されることを懸念し、市側は支障除去の計画から文化財がある地点を外してもらった。市は18年度までに文化財保全の調査などを行い、防衛局は19年度から24年度まで6年間、探査をする予定だ。

 確認書について防衛局は「共通認識を図る観点から市と局で締結した」と説明した。文化財がある地点を跡地利用計画で都市公園として残す考えの市は、周辺の探査を「丁寧にやってほしかった」と話す。防衛局の探査と平行し、公園としての利用を検討している。

■政治日程ありき

 市によると、今回の不発弾処理は西普天間の土地区画整理事業に大きな影響はないという。しかし土地の引き渡し後も米軍の廃棄物が出る北部訓練場と同様に、今後も不発弾などが見つかる可能性はある。河村代表は「返還も引き渡しも政治的スケジュールありきで進められた」と指摘する。「跡地利用のモデルケース」とされる西普天間開発が拙速であることを指摘して「跡地の政策で何が起きているか分からないことは問題だ」と透明性の確保を求めた。
 (金良孝矢)