【糸満】糸満市西崎の焼鳥店「炭火焼鳥かん」を営む店主の泉川寛さん(63)と、妻の世津子さん(58)は新型コロナウイルスの影響で、子ども食堂などが休止となり十分な食事を取れない子どもたち向けに無償で弁当を配布した。24日を除く21~26日の間に、市内の子育て支援施設や喜屋武・大里・米須・潮平の公民館に計300食を提供。寛さんは「微力だが、できることをやっただけ」と控えめに話した。
寛さんは子ども時代、祖父母、母、きょうだい、いとこの10人で暮らしていた。「食べるのもままならない」生活だった。
元々貧困率の高い沖縄でコロナでさらに苦しい家庭が増えていないか心配になったとし「自分も苦しい時代があったから気持ちが分かる」。寛さんは子どもたちに何かできないかと考え、糸満市社会福祉協議会に相談した。子どもの居場所などに食事を提供する「こども未来協力店」の認定を県から受け、協力金10万円を弁当配布に活用した。
弁当には一つ一つ「たいせつなあなたへ」「あなたのえがおがだいすき」などの世津子さんによる手書きのメッセージが添えられている。
寛さんは2年前から店の前に自動販売機を設置し、売り上げの全額を社協に寄付する取り組みもしている。昨年は13万円を寄付した。子どもの居場所の活動資金として活用されるという。
寛さんはコロナ禍で自身の店も1カ月ほど休業した。それでも「自分たちよりきつい人もいる。これからも、無理せず自分のできることをやっていく」と淡々と語った。