「考えた分だけ身につく」 強さ支える探究心 空手 喜友名 諒(劉衛流龍鳳会)<みんなにエール⑥>


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稽古に打ち込む喜友名諒=3月25日、那覇市泊の佐久本空手アカデミー

 空手道の世界選手権は3連覇、日本選手権で8連覇―。空手道の喜友名諒(29)=沖縄市出身、劉衛流龍鳳会=は、至高の形を見せ続け、他の追随を許さない。「努力に勝る天才なし」。洗練された技は底なしの探究心と向上心が支えている。

 中学3年で劉衛流龍鳳会に入門した。今では敵なしの強さを誇る喜友名だが、興南高入学後は6年以上に渡り、日本一の栄光を手にできなかった時期がある。

 沖縄国際大の1年生のとき、優勝を目指して臨んだ全日本学生選手権大会では、予選落ちを喫したこともあった。

 その理由は「経験不足」。全国の舞台を踏む際に、気持ちのつくり方、体の仕上げ方が足りず、良いパフォーマンスが発揮できなかったという。予選落ちしたこの大会は小学校から勝ち負けを繰り返してきたライバルの宮崎健太(同志社大)が頂点に立つ。仲の良い友人でもある宮崎が表彰台に立つ姿を見て、うれしい気持ちになると同時に、燃えるような悔しさも湧き上がった。

 焦りはなかった。師である佐久本嗣男氏の指導の下、一歩ずつ前進している手応えがあったからだ。相手の動作の細かな動き、心情の機微に至るまで観察しようとし、「何が違うのか」と試行錯誤を続けた末、3年時に同大会で初優勝を果たした。

 圧倒的な強さを誇る現在でも、毎日の稽古の後に家に帰ってからの自主トレーニングを忘れない。食事中も空手のことを考える。たまに格闘技の試合を見ると「こういう技も有効だな」と思わず空手に置き換え、応用を考えていることがある。「天才ではないです」。24時間365日、実直に稽古を続けているだけだ。

(喜屋武研伍)

県学生選手権の組手、形を制し、2年連続2冠を達成した大学3年時の喜友名諒。この年の全日本学生選手権男子形で初優勝する=2011年4月、県立武道館

メッセージ

 努力したからといってもすぐに勝てるわけじゃない。何であれ、どういう分野であれ、すぐにできる人はいない。だけど、考えた分だけ、楽しくやった分だけ身につくということは間違いないはずだ。今は体づくりをメインに行うのが良いと思う。何でこういう動きになるんだろう、何で今は調子が良いんだろうなどといろいろ考えながら練習に取り組んでもらいたい。こういう時に稽古の大切さを感じてほしい。何もせずに過ごすのではなく、今の時期だからこそ大切にすべきことがある。(新型コロナが収束した時に)それぞれに差が出てくるだろう。

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 新型コロナの影響で部活はできず、目標とする大会が中止となった子どもたちへ、県出身アスリートが自身の経験を振り返り、エールを送る。