沖縄こうしたい…舌戦スタート 「女性の声足りぬ」「普天間返還」「離島振興」「病院を」


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一定の距離を保って気勢を上げる支持者ら=29日午前、本島南部

 任期満了に伴う県議選が29日に告示され、各地で9日間の選挙戦がスタートした。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各候補は選挙戦術の見直しを余儀なくされ、通常の舌戦風景から様変わりとなった。手探りの選挙活動を進める中、集まった支持者らを見て涙ぐむ候補者も。各陣営は感染予防に気を使い、出発式・出陣式で距離を保つよう呼び掛けたり、握手を控えたりするなどして政策を訴えた。うるま市、浦添市、名護市、石垣市の4選挙区が無投票となり、一足早く当選の喜びの声が聞こえた。

<那覇市・南部離島区>支持獲得へ政策訴え

 有権者数が最多の那覇市・南部離島区は定数11に対し、16人が立候補する激戦区となった。各候補者は人通りの多い交差点や選挙事務所近くで第一声を発し、1票でも多く獲得しようと気勢を上げた。

 ある与党系候補者は国道沿いで、手ぶりから始めた。「今の県議会では、女性の声が圧倒的に足りていない。多様な声を届けていく。皆さんの暮らしを支えるため、最後まで走り抜けていきたい」と訴えた。

 野党系候補者は「一日でも早い経済対策を。補助をくれ、というだけでは国の言いなりの政策しかない。依存するような姿勢を変えるため政治家が覚悟を。議員報酬を減らす」と政策を訴えた。

 別の野党系候補者は「沖縄の次の50年を展望する重要な選挙だ。平和で豊かな島にしましょう。勝たせてください。沖縄の発展のために働かせてください」と強調した。

<宜野湾市区>普天間返還で独自色

 米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市区は定数3で、玉城デニー県政に対する与党系2人、野党系2人が争う。飛行場の所属機や外来機が上空で離着陸訓練を繰り返す中、それぞれの候補者は政策を訴え、激しい選挙戦をスタートさせた。

 飛行場の名護市辺野古移設を巡り、各候補者の立場は異なるが、飛行場の「一日も早い閉鎖・返還を」との思いは一致する。ある与党系候補者は同じイメージカラーを身に着けた支持者を前に、「不条理をただすのは政治の役割だ」と強調した。ある野党系候補者は主要交差点に集まった支持者を前に、「人と人との間で政治をつくっていく」と力を込めた。

<国頭郡区>金武、本部中心に競り合い激しく

 定数2に4人が名乗りを上げる国頭郡区では、金武町と本部町を中心に激しい選挙戦が展開される。29日朝、各候補者は出陣式などを開いた。候補者同士の出陣式がわずか数十メートルの距離で隣り合い、第一声が交錯する場面もあった。

 各候補者は北部の課題について訴えた。名護市の2病院を統合する北部基幹病院設置について、ある候補者は「命と健康を守る病院を誰がつくるのか。早期実現をしたい」と強調した。別の候補者は市辺野古の新基地建設について「(県民投票で反対に投じられた)70%以上の民意を実現できるよう、踏ん張ろう」と訴えた。出陣式を終えた各候補者は、やんばる路の遊説に駆け出した。

<沖縄市区>少数激戦の展開 運動も熱帯びる

 沖縄市区は定数5に対し、現職3人、前職1人、新人2人が争う。市内の主要交差点や選挙事務所前で出発式を開き、候補者はマイクを握って政策を訴えた。ある候補者は「地元に根差し地元の声を県政に届けたい。一緒に戦おう」と気勢を上げた。家族からたすきを受け、感極まる候補者もいた。少数激戦の選挙戦は初日から熱を帯びている。

 街頭に立ったある候補者は「県民の命と暮らし、尊厳を守るために頑張る。1票を託してほしい」と声を張った。別の候補者は市内で建設中のアリーナ、東部海浜開発事業を核とした街づくりの推進を訴えた。他の候補者は「沖縄の経済と生活を底上げする」と拳を握った。

<中頭郡区>基地問題解決へ一丸で勝利誓う

 中頭郡区は定数5に対し現職4、新人3の計7人が名乗りを上げた。各選挙事務所や目抜き通りで開かれた出発式に集まった支持者らは引き締まった表情を見せた。「必ず勝利を」と気勢を上げ、選挙戦に全力投球で臨むことを表明した。

 出発式で、候補者は基地問題や地域振興を訴えた。ある候補者は「日米地位協定の壁、不条理を解決しなければならない」と訴えた。別の候補者は新型コロナで打撃を受けた県経済を回復させるため、次期振興計画の議論を深めることを支持者に誓った。

 他の候補者は「基地問題は避けて通れない。玉城知事を支え、辺野古新基地は絶対に造らせない」と力強く訴えた。

<豊見城市区>働き盛り世代に子育て支援力説

 豊見城市区は定数2に対して保守と革新の現職2人、保守中道の新人1人が立候補し、三つどもえとなった。各候補者らは市内にあるそれぞれの事務所前で出発式、出陣式を開いた。ある候補者の集会では、支持者が「横一線の状況だが、(得票)1番を目指して勝ち抜いていこう」と熱っぽく訴え、勝利に向けて気勢を上げた。

 豊見城市は市民の平均年齢が約40歳と若く、働き盛りの世代が多い。立候補者らは第一声で、それぞれ独自の経済対策や子育て支援策などを力説して支援を求めた。支持者から「一緒に頑張ろう」と声を掛けられ、候補者はそれぞれ事務所を出発した。同日、各所でスポット演説を精力的に実施した。

<糸満市区>近距離で第一声 市内へ繰り出す

 糸満市区は定数2で、現職2人と元職1人が出馬した。各候補の事務所は半径500メートル以内に集中し、地盤も競合する。29日朝は近距離で3陣営がそれぞれ出発式を開いた後、候補者や運動員が市内に繰り出した。

 候補者の一人は事務所前で出発式をした後、車に乗り込んだ。各地で遊説し声を枯らした。

 ある候補者は交差点前に立ち第一声を上げた。集まった支持者らはそろいの鉢巻きを締め、拍手や指笛で応援した。

 その交差点から数百メートルの場所では、さらに別の候補者が出発式を開いた。交差点から相手陣営のマイクの音声が聞こえる中、自身への支持を訴えていた。

<島尻・南城市区>戦略工夫凝らし地域を回り熱弁

 定数4の島尻・南城市区には現職4人と新人2人が立候補した。各候補者はそれぞれの戦い方で本格的な選挙戦に走り出した。

 候補者の1人は自転車に乗って移動し、選挙区内の主要箇所で地区ごとの出発式を開き、演説をこなした。別の候補者は事務所前で出発式を開いた後、地盤とする地域を丁寧に回り支援を呼び掛けた。

 与党候補の1人は街宣車に乗り遊説。「南部地域のインフラ整備を進めなければならない」と訴えていた。

 ある野党候補者は県選出国会議員と演説会を開き「子どもの貧困解決を目指す」と熱弁を振るっていた。

<宮古島市区>市長選見据え火花を散らす

 宮古島市区は定数2に対し現職1人、新人2人が立候補した。内訳は県政与党1人、野党2人。前回選挙と同様に保守系候補が競合した。来年1月には任期満了を迎える宮古島市長選も控えており、各候補者とも市長選も見据え、激しく火花を散らした。

 各候補者は29日、選挙事務所前や中心市街地の交差点で出発式を開いた。会場はそれぞれのイメージカラーで染まった。支持者らはガンバロー三唱で10日後の勝利に向けて気勢を上げた。

 ある候補は「命と暮らしを守り、宮古島らしい島づくりに取り組む」と強調した。別の候補は「政権とのパイプを維持し離島振興に取り組む」と訴えた。他の候補は「宮古島の振興のためにも勝利し、市政刷新につなげたい」と決意を示した。

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