<県議選私の訴え>国頭地区「辺野古、医療格差」争点、沖縄市区「低所得、コロナ」、中頭は「基地被害」


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 第13回沖縄県議会議員選挙(定数48)は6月7日の投開票まで1週間を切った。4市区で12人の無投票当選が決まり、残り36議席を9選挙区の52人が争う。各候補者は県政全体の課題だけではなく、医療格差や離島振興など、それぞれ地域課題についても政策を訴えている。候補者の重要政策や訴えから、各地域の課題や争点を探る。 (’20県議選取材班)

<国頭郡区>「辺野古」など課題山積 医療格差の解消急務

 本島中南部と比べ、人口も少なく高齢者の多い北部地域は「県土の均衡ある発展」を求めている。医療格差は著しく、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事が進み周辺環境に影響を与えていることなどから、解決すべき課題は多い。

 辺野古移設工事が本格化し、それに伴う雇用創出を望む声がある一方、渋滞発生や砂ぼこりなどで周辺環境が一変し改善を求める声は多い。

 一方、名護以北は、医師不足や診療制限が顕著で、各候補が口々に早期の北部基幹病院整備を訴える。医療体制が整っていないことで、他地域への人口流出につながりかねないと危惧する。さらに子育て支援や教育制度の充実は、各候補者が共通して抱える思いだ。離島・へき地での教育機会を充実させるべく、教育費の負担減を求めている。

 また、国頭村を中心としたやんばるの一部地域が世界自然遺産候補となっていることから、新たな観光産業の創出が期待できる。一方、交通面の整備は重要な争点となっており、鉄軌道導入をすべての候補者が求めている。伊江、伊平屋、伊是名の離島3村についても、架橋整備などを求める声があがる。

<沖縄市区>経済、雇用対策を重視

 県都那覇市に次いで人口の多い沖縄市は、所得水準の低さや新型コロナウイルスの感染拡大による経済の低迷を背景に、多くの候補者が経済振興や雇用対策を重視する。雇用者報酬や企業所得、財産所得を含んだ市町村民所得を人口で割った「1人当たりの市町村民所得」(2016年度)は、190万円と全41市町村で3番目に低い。

 市内にはサービス業や小売業に従事する人が多く、新型コロナで営業を自粛した事業者への助成や減免を要望する声が目立つ。雇用対策として正規雇用の拡充を求める候補もいる。

 各候補は子育てや教育分野も重要政策と位置付ける。子どもの貧困が社会問題化する中、沖縄市は若年妊産婦の支援拠点「若年妊産婦の居場所」を県内で初めて開所した。生活困窮世帯を支援する「子どもの居場所」は31カ所と那覇市に次いで2番目に多い。多くの候補者が学費や保育料の負担軽減を求めている。

 交通渋滞の解消も深刻な課題だ。各候補者は基幹バスや既存のバス路線拡充による公共交通網の整備を訴える。鉄軌道や次世代型路面電車(LRT)の導入を求める声もあり、課題解決に向け県との連携が必要だ。

<中頭郡区>基地被害解決掲げる

 米軍嘉手納基地やトリイ通信施設など多くの米軍施設を抱える中頭郡区は、大半の候補者が基地被害の解決に向けた政策を掲げる。

 5月12日に北谷町で米兵らによる強盗事件が発生した。嘉手納町は、嘉手納基地から発生する騒音や悪臭が4月後半から深刻さを増しているとして沖縄防衛局に負担軽減を求めた。米軍関係の事件や事故が起きるたびに、各町村議会は米軍や日米政府に抗議している。

 中頭郡区に隣接する宜野湾市の普天間飛行場返還問題では、与党系の候補者が閉鎖・撤去、または県外移設を主張する一方、野党系の候補者は名護市辺野古への移設はやむを得ないとする。日米地位協定の改定については、県政与野党の立場を問わず改定すべきとの意見で一致している。

 一方、2019年の厚生労働省の調べで、沖縄県は待機児童の割合が全国で最も高かった。県のまとめでは、中頭郡区は中城村を除く5町村で待機児童率が県平均を上回った。特に人口増加の著しい北中城村は、2番目に高い割合だった。各候補とも待機児童の解消に取り組むとして、保育士や指導員の処遇改善を求めている。

 野党系候補は経済振興を重視する傾向があり、一括交付金の予算増額や市町村ごとの分配の見直しなどを訴えている。

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