「比謝川圏」魅力もっと発信を 町の日常見てほしい 嘉手納町・喜本てつ子さん


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喜本 てつ子さん

 町面積の82%を米軍基地が占める沖縄県嘉手納町。「基地の町」というイメージが強いが、雄大な比謝川ではカヤックをはじめとする自然体験ができ、町を歩けば特異な歴史や文化に触れることができる。地域密着型の個人商店が多いことも特筆すべき点だ。地域で頑張る事業者を支え、町の活性化に取り組む喜本てつ子さん(46)に話を聞いた。

 ―町振興への関わりはどのように始まったのか。

 「町商工会の指導員から声を掛けられたことがきっかけで、2018年度から商工会業務に携わっている。4月からはFMよみたんの一員にもなり、町と読谷村をまたぐ比謝川経済圏域の総体的な活性化に向け取り組んでいる」

 ―町づくりのこだわりは。

 「嘉手納は本島の中央に位置し交通の利便性も良いのに、目立った基幹産業や観光地が少ないため通り過ぎてしまう人が多いのが課題だ。大きな祭りがある時はにぎわうが、一過性のものとなる傾向がある」

 「幸い町には個性豊かで地元愛に満ちた店主が多い。いかに多くの人に、繰り返しこの町に来たくなるきっかけを届けられるか。とにかく足しげく事業者に会って現状や課題、展望に耳を傾ける。そこからどう前へ進むかを一緒に考えるように心掛けている」

 ―具体的な取り組みは。

 「商工会では18年度から、商店主がプロならではの技や知識を、ゆんたくで交流しながら教える少人数制の『まちゼミ』を始めた。町内外の人に実際に足を運んでもらい、その店や店主のファンづくりをすることにこだわった」

 「お客さんには満足を、店には新規顧客と売り上げを、そして町にはにぎわいを。買い手、売り手、地域の『三方よし』の取り組みは好評で、開催規模と参加人数も着実に増えている」

 「観光客へのPR強化を目的に、これまで地域の便利帳の役目を果たしていたガイドマップも刷新した。ご当地グルメやショップ情報に加え、町を五つのエリアで区分し、それぞれの楽しみ方や“インスタ映え”スポットも紹介している。若い人にも手に取ってもらえるよう表紙はポップでしゃれたイラストを採用した。美しいサンセット(夕日)や戦闘機も盛り込んだ。言葉にはしないが、日常を見てほしいという思いも込めた」

 ―今後の展望は。

 「嘉手納はたくさんの可能性を秘めている。町観光協会の設立に向けより一層、役場や事業者と連携し、魅力を発信していきたい。また比謝川を挟み隣接する読谷村との架け橋となり、相互の観光推進や経済活性にも尽力したい」
 (聞き手・当銘千絵)


 きもと・てつこ 1973年生まれ、宮城県出身。東日本大震災を機に息子と沖縄へ移住。2018年度から嘉手納町商工会の臨時職員として町振興に携わる。町観光協会設立に向けたリサーチなどにも従事するほか、20年4月からFMよみたんの営業として比謝川経済圏域の振興・活性化に取り組む