新基地、反対も容認も「古里のため」<6・7県議選 1票の現場から>2


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辺野古に向けて埋め立て用土砂を搬出する本部港塩川地区。新基地建設に反対する市民が抗議の声を上げる=4月14日、本部町

 本部町崎本部の採石場と本部港塩川地区に挟まれた国道449号をダンプカーが行き交い、砂ぼこりが舞う。普段はダンプカー数百台が土砂を運ぶが、辺野古の工事関係者が新型コロナウイルスに感染した影響で、現在は土砂搬出が止まっている。県議選で争点となる米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う新基地建設。埋め立て用の土砂が採取される本部町では、本部港塩川地区から辺野古に運ばれる土砂の量が増えている。基地建設に反対する人、容認する人。土砂搬出を見つめる町民の視線はさまざまだ。

 「観光の町なのに入り口の道路が砂ぼこりだらけ。基地のために山が削られ地形が変わり、このままだと山が無くなってしまう」

 採石場近くに住む新城秀子さん(70)=崎本部=は、土砂搬出に厳しい視線を向ける。砂ぼこりは家の中にも入り込む。「毎日拭き掃除が欠かせない。45年間も住んでいるが、ここ数年で悪化した。健康被害が出ないか」と眉をひそめた。

 昨年の県民投票では「事件事故で命を脅かす基地はいらない」と反対票を投じた。「政府は秋田市へのイージス・アショア配備を地元の反対で断念した。沖縄も反対の民意を示したのに、なぜ無視するのか」と、やるせなさがこみ上げる。政治家には新基地建設の中止を期待する。「環境を破壊し、暮らしを危険にさらす基地建設はやめてほしい」

 町内で農業を営む70代男性は、新基地建設を容認する立場だ。土砂搬出もやむを得ないと捉えている。「自然は大切だが、それだけでは食べていけない。土砂を運ぶ仕事があるから、ここで生きていける人もいる。大事なことだ」

 かつては男性も米軍基地に反対だった。県外で働き、30代で本部に戻った。地元で暮らすうちに、那覇や米軍飛行場を抱える伊江村などと生活格差があることや、人口の減少を実感した。「基地でも雇用を生み若者の働き口になる。人が生活を続けられることが第一で、それが古里を守ることだ」と考えが変わった。

 友人の中には葛藤しながら辺野古への土砂搬出に携わる人や米軍キャンプ・シュワブで働く人、新基地建設に抗議する人もいる。時には基地について議論を闘わせることもあるが、同じ町で暮らし支え合う仲間であることに変わりはない。

 政治家に求めることは国、県からの予算獲得だ。男性は「若者が暮らし続けられる地域をつくってほしい」と願った。(岩切美穂)