【記者解説】県民向け宿泊助成 県内需要喚起で観光下支え


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 県をまたいだ移動の自粛が1日から緩和され、新型コロナウイルスの感染拡大で大きなダメージを受けている沖縄経済の支援策も新たな段階に入る。県はリーディング産業である観光業の早期回復に力を入れ、県経済の立て直しにつなげる考えだ。

 人の移動が規制されて事業者も休業を余儀なくされてきたこれまでは、支援金の給付などで売り上げの減少を補い、廃業や解雇が続出するのを食い止めるしか経済対策の取りようがない面があった。

 5月に入って県内では新規感染が確認されず、全国的にも緊急事態宣言の解除で行動制限が緩和されたことで、観光客の受け入れを再開する条件は整った。県は旅行需要を喚起することで観光業を支援する方向へ対策を移していく。

 だが、コロナの完全な終息は遠く、沖縄に観光客を運ぶ航空路線も大幅に減便・運休している。沖縄の入域観光客の7割を占める国内需要が急速に元に戻る状況にはない。

 このため県が1日に発表した「沖縄彩発見キャンペーン」は、国内の観光需要が活性化するまでの間、県民が県内のホテルや観光施設を利用することで、観光産業の体力をつなぎ留める狙いがある。

 7月下旬からは政府の国内旅行喚起策「GoToキャンペーン」も始まる予定で、観光事業者らは国内観光市場が本格的に動き出す時期として照準を合わせる。県は、移動自粛要請が全面解除となる今月19日以降に誘客プロモーションなども展開していく考えで、県民の旅行需要の喚起と並行して国内需要を取り戻す取り組みを進める。

 一方で、ホテル関係者からは「キャンペーンはありがたいが、とにかく水際対策が先ではないか」との指摘が出る。安心感を持って沖縄を訪れてもらうには感染防止対策や医療体制、水際対策の強化が不可欠だ。

 国内旅行が本格化するまでに、県内でどれだけコロナ対策を徹底できるかが長期的に沖縄観光を復活させるための鍵となる。
 (中村優希)