社会
沖縄からSDGs

産業と技術革新の基盤をつくるには?【SDGsって? 知ろう話そう世界の未来】9


 豊かで幸せな暮らしにはさまざまな産業の発展が不可欠だ。限りある資源を大切に使い、持続可能な産業のあり方が世界中で模索されている。その土台となるのは新しい技術やサービスを生み出すイノベーション(技術革新)や、道路や鉄道といった暮らしを支えるインフラだ。SDGs(持続可能な開発目標)のゴール9は「産業と技術革新の基盤をつくろう」。海外で現地の生活を支える県内発の技術、県外と協力しながら県内産業を発展させるIT技術の事例を紹介する。



ITの競りで漁業活性化

Rewso 那覇市

 SDGsに特化した事業を手掛けるRewso(リューソ、那覇市)は、2021年度までに、名護漁協を中心とした北部の漁協で、ITを使った水産物の「競り入札システム」の導入を目指す。相対での取引が多い水産物の競りにITを使ったシステムを導入することで、遠隔地からも入札が可能になり、取引が活発になることで魚価や漁業者の所得向上につながる。Rewso6次産業推進事業部の原山徹夫部長は「漁業を盛り上げて地域も活性化させたい」と語った。

 競り入札システムでは、市場での競りを電子入札で行う。市場にいる仲買人だけでなく、インターネットを使って県外や海外からも入札が可能になる。船上にいる漁師がスマホなどを通して水揚げ量や魚種を市場に共有することも可能で、船上から水産物を競りに出すこともできる。ITを活用して販路の幅を広げることで、魚価の向上を目指す。


競り入札システムを導入した大阪府鰮巾着網漁業協同組合。シラスの取引を電子入札で行う(Rewso提供)

 このシステムはRewsoの出資会社の一つであるT's products(大阪府)が開発した。同社は17年から、シラスの産地にある大阪府鰮(いわし)巾着網漁業協同組合でシステムを導入した。同漁協ではシラスを相対で取引していたが、思うように漁業者の希望する値段で取引されないという課題があった。このシステムを導入したことで、遠隔地からも入札ができ仲買人が増え、魚価の向上につながった。導入前のシラスの平均価格は1かご25キロ当たり7千円ほどだったが、導入後は1万8千円まで上がり、漁業後継者も増えた。

 原山部長は「ITを導入することで取引が活発になり、流通が広がる。このシステムを一つのツールとして、地域の漁業を盛り上げたい」と意気込んだ。





バリの生活支える焼却炉

トマス技術研究所 うるま市

 現代の人間生活はごみと切り離せない。ごみの適正処理は生活を支え、重要な社会基盤の一つといえる。沖縄で開発された小型焼却炉がインドネシアで利用され、ごみを安全、安価で処理し、地域の生活を支えている。

 バリ島では、野積み形式の最終処分場が家庭ごみのほとんどを長く受け入れてきた。産業廃棄物を処理する施設はなかった。バリ州の州都デンパサール市の住宅密集地にあるワンガヤ市立総合病院では毎月、日本円で90万円ほどをかけてジャワ島まで輸送していた。一時、院内に設置した焼却施設は煙の臭いが強く、稼働音も大きく、近隣から苦情が出て使用停止になった。院内に積もった廃棄物は悪臭を放った。「地域の人たちが怒って大変だった」。小型焼却炉を開発するトマス技術研究所(うるま市、福富健仁社長)の現地職員、パンツァさんはこう振り返った。


病院で医療廃棄物の処理に活躍するチリメーサー。焼却しない土日のごみがすでに置き場からあふれていた=3月、インドネシア・バリ州

 ごみ減量へバリ州は2018年に使い捨てプラスチックを禁止し、ペットボトルなどの再利用を進める。一方、減らすことも再利用もできず残るのが、血液の付いた注射針や使い捨ての手袋、薬品容器といった医療用廃棄物だ。同院だけで毎日100キロほどになるという。

 この病院に16年、国際協力機構(JICA)の事業を活用してトマス技研の小型焼却炉チリメーサーが導入された。無煙で焼却温度を調整することでダイオキシンを分解し、稼働音も小さい。周囲からの苦情も出ず、1日分の廃棄物を2時間ほどで燃やしても、稼働率はまだ余裕があるという。「バリはごみを燃やす習慣がなかった。このやり方を知り、問い合わせが増えている」。導入に向けた手続き中の病院がいくつもあると、パンツァさんは胸を張った。

 チリメーサーは19年、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で途上国支援事業の好事例として紹介された。ことしに入りモルディブにも導入され世界中に広がっている。




全国最低の学校耐震化



 公立小中学校の校舎や体育館のうち、震度6強以上に備えて耐震化された割合は県内は93.0%(2019年4月現在)。前年より改善したが、全国は99.2%で都道府県別では全国最低だ。国の補助が少ない私立学校では全国の90.3%に対し県内は84.7%(2018年4月現在)とさらに低い。

 県は同年、大規模災害に備えた県国土強靱(きょうじん)化地域計画を策定した。だが沖縄振興一括交付金の減額などで、学校をはじめ道路や港湾、治水などの社会資本整備事業は遅れているのが現実だ。



SDGsとは…
さまざまな課題、みんなの力で解決すること


 気候変動、貧困に不平等。「このままでは地球が危ない」という危機感から、世界が直面しているさまざまな課題を、世界中のみんなの力で解決していこうと2015年、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が決められた。世界中が2030年の目標達成へ取り組んでいく。

 「持続可能な開発」とは、資源を使い尽くしたり環境を破壊したりせず、今の生活をよりよい状態にしていくこと。他者を思いやり、環境を大切にする取り組みだ。たくさんある課題を「貧困」「教育」「安全な水」など17に整理し、それぞれ目標を立てている。

 大切なテーマは「誰一人取り残さない」。誰かを無視したり犠牲にしたりすることなく、どの国・地域の人も、子どももお年寄りも、どんな性の人も、全ての人が大切にされるよう世界を変革しようとしている。

 やるのは新しいことだけではない。例えば、スーパーのレジ袋を断ること。話し合って地域のことを決めること。これまでも大切にしてきたことがたくさんある。視線を未来に向け、日常を見直すことがSDGs達成への第一歩になる。






関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス