先島自衛隊配備 「話し合い足りぬ」「反対しても仕方ない」「譲り合いを」<6・7県議選 1票の現場から>5


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石垣島への自衛隊配備計画についての思いを語る伊良皆高虎さん=5月、石垣市真栄里

 石垣島にある県内最高峰・於茂登岳の麓の畑。5月中旬、原料からハーブティーを製造する伊良皆高虎さん(29)は耕運機を動かしていた。「コロナの影響で商品の卸が止まっているから、ハーブ農園づくりのために畑を改造しているんです」

 畑から近い於茂登集落に自宅がある。そう遠くない場所では、陸上自衛隊駐屯地の建設工事が進んでいる。伊良皆さんは、同地への陸自配備の賛否を問う住民投票を求める会のメンバーだ。

 自衛隊員を志したこともある。およそ5年前、建設計画が地元に降ってわいた。「なぜここに」。浮かんだ疑問は解消されないまま、昨年には工事が始まった。今年4月までに、計画地の半分を占める市有地は沖縄防衛局に提供された。

 「みんなが納得するなら配備に何も言う気はない。だが、(地元の懸念に)国は『関係法令に沿って適切に対処する』と言うだけだ。話し合いが全然足りていない」と表情が険しくなった。

 3月、宮古島には地対空・地対艦誘導弾部隊が配備された。配備計画の浮上以来、島民は複雑な思いを抱き、賛否で二分されてきた。

 “標的”になるとの懸念から、配備に反対する声はいまだ根強い。一方、諦めの声も聞こえる。計画が伝わった当初、市内の男性会社員(54)は「島に来てほしくない」と感じていた。しかし、配備が着々と進んだ状況に対して「反対しても仕方がない」と考えるようになった。現在、島への経済効果を期待している。

 石垣市での住民投票実施を巡って、求める会と市は裁判で争っている。工事が進む現状に「いまさら住民投票を実施しても」との声もあるが、伊良皆さんは前を向く。「島では、まだ仲間うちでもなかなか話しづらいし、情報も足りていない。けれども住民投票があることで、みんなが話し合い、考えるきっかけになる」

 住民投票に向けた活動の中で、陸自配備への賛否それぞれの声に触れ、こう思うようにもなった。「過半数を取った意見だけが絶対の民意なのか」

 政治への関心が高まり国会中継も見るようになったが、「譲り合いがない」と感じた。新たな県議たちには徹底的に話し合って、答えを導くことを求める。「どんな問題であれ、互いに譲れない中でも話し合いをしながら、49%以下の意見も取り入れていく。それができるのは人間だけだ」
 (大嶺雅俊、佐野真慈)