公明「次の闘い」へ布石 宜野湾・国頭で無所属当選を後押し<薄氷の過半数 県議選の内幕>


公明「次の闘い」へ布石 宜野湾・国頭で無所属当選を後押し<薄氷の過半数 県議選の内幕>
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 県議選が告示された5月29日夕、宜野湾市の普天間交差点で開かれた呉屋宏氏の出陣式は熱気に包まれていた。支持者を前に呉屋氏はこう語った。「本当に苦しく、真っ暗なときに一点の光が見えた。それが公明党の推薦でした」

 定数3の議席を与党2人、野党2人で争った宜野湾市区。選挙前、自民党公認候補と与党系候補には党や労組の支援が見込まれる中、呉屋氏の後ろ盾となる組織は一つもなかった。

 当初、野党・中立で過半数を目指した自民党県連は呉屋氏に推薦を出す予定だった。しかし公認候補だった又吉清義氏を支援する宜野湾市の自民党系市議団からの反発が大きく、推薦を見送った。選挙期間中、又吉陣営の関係者は「2年後には市長選もある。呉屋氏が通ると、ややこしくなる」と語っていた。さらに、呉屋氏の後援会長に自民党3区支部長の島尻安伊子氏の夫・昇氏がついたことに対して島尻氏に抗議する陣営関係者もいた。

 国場組をはじめとする経済界は「宜野湾で保守2議席」を目標に地域の企業を回り呉屋氏の支援を求めたが、又吉陣営は地域の企業票を又吉氏に固め呉屋氏への流出を防ぐという全く違う動きをしていた。自民市議団に「保守2議席」を獲得する意思は希薄だった。こうした中、呉屋氏の支援に力を入れたのが公明党だ。

 新型コロナウイルスの影響を受け、公明党は現職県議を含む2人の立候補を取り下げた。「選挙運動で1人の感染者も出さない」ことを掲げていた支持母体の創価学会は6月末まで各地の会館の使用を停止していた。従来の支援態勢が築けず「苦渋の決断」(創価学会幹部)で2候補の出馬を取り下げざるを得なかった。

 公明党は選挙期間中、公認候補が立候補した沖縄市区と那覇市・南部離島区を重点区と定めた。これら2区以外では「選挙戦を通して次の闘いを応援してくれる仲間をつくる」(創価学会幹部)運動を展開した。

 創価学会関係者によると、野党候補2人が立候補した宜野湾市区、国頭郡区では、学会の組織票を2候補へ均等に振り分けた。国頭郡区は北部と南部で票を振り分け、劣勢が伝えられていた仲里全孝氏には金武や宜野座、恩納で支援を強めた。宜野湾市区でも票を二分したが、元市議会議長で影響力の強い学会関係者が全面的に呉屋氏を支援した。宜野湾市区で呉屋氏、国頭郡区で仲里氏が当選する流れがつくられていった。

 ただ公認候補2人の立候補を取り下げつつ、呉屋氏や仲里氏を支援したことに不満を持つ自民党関係者もいる。宜野湾の自民党関係者は今選挙の公明党の動きをこう分析した。「地域に根ざした政党だと標ぼうするが、結局は学会員票頼みでしか選挙ができないことを露呈した」 (’20県議選取材班)