自民躍進、知事選にらみ色めき立つ 政府と党本部<薄氷の過半数 県議選の内幕>


自民躍進、知事選にらみ色めき立つ 政府と党本部<薄氷の過半数 県議選の内幕>
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 「わが党は議席数を大きく伸ばし、善戦できたことは大変大きな成果だ」

 県議選から1夜明けた8日の自民党役員会で、安倍晋三首相は選挙結果を肯定的に評価した。

 役員会後に会見した二階俊博幹事長も「勝利に対して敬意を表する」と強調。

 沖縄の基地負担軽減を担当する菅義偉官房長官は会見で、「(辺野古新基地建設について)かなり理解が進んでいるのではないか」とも語った。目標とした過半数の議席獲得には届かなかったにもかかわらず、政府自民党内は喜色にあふれた。

 自民党は当初、公明や保守系無所属で過半数の議席獲得を目標に掲げたが、新型コロナウイルスの感染予防として公明県本が候補者2人を降ろしたことで事態は一転した。

 新型コロナを巡る政府の対応に世論の批判が集まり、大手メディアの世論調査で内閣支持率は急落した。感染症の影響で下村博文選対委員長も沖縄入りを取りやめるなど、大型選挙で恒例となっている県外から応援を入れることも難しくなった。与党内からは「難しい選挙戦だ。1議席でも増えればいい」(自民党幹部)との声も出ていた。「もともとの期待値が低かった」と冷めた見方もあるが、議席増は“予想外”の朗報として政府与党内を駆け巡った。

 与党県議の引き抜きを巡る情報も交錯する。自民党関係者は「県政与党過半数は崩せないまでも、知事が県政運営で配慮が必要になるだけでもいい」と話す。

 自民党国会議員の一人は、新型コロナの影響で経済が沈む県内の雰囲気を「大田昌秀氏を破って稲嶺恵一氏が知事に当選した頃の雰囲気に似てきた」とつぶやく。大田氏が3期目を目指した知事選で、当時の自民党は基地問題で政府との関係を悪化させて振興策を止めたとし「県政不況」とキャンペーンを張り、稲嶺氏の当選につなげた。

 観光客の増加を背景に、好調が続いてきた県経済が新型コロナの影響で急ブレーキがかかる中、「経済が弱くなると自民党が強くなる」(政府関係者)との分析もある。2年後の知事選もにらみ、にわかに勢いづく。

 県議選の結果は、来年度で期限を迎える沖縄振興特別措置法の継続の是非に影響を与えるとの見方もある。県関係自民党国会議員の一人は、多くの自公候補者が振計の継続を訴えたことを踏まえ「(ポスト振計を巡る)政府与党内の議論で、発言力は大きくなる」と感触を語る。政府与党内からも「厳しい中で頑張った。意見は聞かないといけないだろう」と話す。

 ポスト振計や知事選をにらんだ駆け引きが始まった。
 (’20県議選取材班)